福岡県感染症発生動向調査情報

平成18年第43週分(平成18年10月23日〜平成18年10月29日)

ライム病

今週は、比較的新しい感染症であるライム病について解説します。

ライム病は、ボレリアと呼ばれる病原体による感染症で、1977年、アメリカ合衆国で原因不明の関節炎(ライム関節炎)として最初に報告されました。日本では、1986年に初のライム病患者が報告されて以来、最近では、毎年5から15名の患者が、主に本州中部以北で見つかっています。福岡県では平成13年以降、現在まで2件(一昨年と本年)の発生が報告されました。

病原体ボレリアのヒトへの感染は、病原体を保有している野ネズミや野鳥に吸血し、有毒化した、野山に生息するマダニに刺咬されることによって起こります(一般家庭内のダニで感染することはないとされています)。症状としては、マダニに刺咬されてから数日から数週間後に、刺咬部を中心に紅斑が出現し、経過とともに、この紅斑が遠心性に拡大する遊走性紅斑と呼ばれる特徴的な症状がみられます。また、筋肉痛・関節痛・頭痛・発熱などのインフルエンザ様の症状を伴うこともあります。治療せずに放置しておくと、前述の紅斑が多発性に出現し、神経症状・心疾患・眼症状・筋肉炎・関節炎など多彩な症状がみられるようになり、さらにこれを放置していると、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれています。

治療は、感染初期であれば抗生物質の投与で完治します。ただし、治療が遅れると様々な合併症を引き起こす可能性がありますので、早期に治療を開始することが大切です。野山でダニに刺咬され、先ほど述べたような症状が出現した際には、すぐに医療機関を受診しましょう。

予防には、野山でマダニの刺咬を受けないことが最も重要です。マダニの活動期(主に、春から初夏、及び秋)に野山に出かけるときには、むやみに藪などに分け入らない、皮膚の露出を少なくする、マダニの付着が確認できる明るい色の衣服を着用する、防虫スプレーを使用するなどを心がけましょう。

その他、詳細情報は、福岡県感染症情報(http://www.fihes.pref.fukuoka.jp/~idsc_fukuoka/)として、情報提供していますので、ご活用ください。