前週、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が報告されました。そこで、今回は、この劇症型レンサ球菌感染症についてお話しします。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、1980年代から欧米やアジアで報告され、日本でも1992年以来、200人を超える患者が確認されています。福岡県でも、年間5例程度報告されています。
A群溶血性レンサ球菌により引き起こされる疾患ですが、この菌による一般的な疾患は、小児からの報告が多いA群溶血性レンサ球菌咽頭炎です。一方、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子供から大人まで広範囲の年齢層に発生し、特に中高年に多く報告されています。発生機序等、まだ十分には、解明されていない疾患でもあります。
発熱、咽頭痛などのかぜ症状から始まることが多く、続いて、四肢の疼痛・腫脹、血圧の低下、皮下の筋肉や脂肪部分等の軟部組織の壊死、多臓器不全等を引き起こしショック状態となります。症状の進行は早く、早期に適切な治療を行えない場合は、急速に死に至ることがあり、死亡率も30%以上と極めて高いとされています。外傷、術後の手術創からの感染、妊娠中または分娩後の発症もあります。
このように、重篤な疾患ではありますが、早期に診断、治療を行うことができれば、予後はよいとされています。
治療は、ペニシリン系抗生剤が奏功し、その他に、クリンダマイシンや免疫グロブリン等も使用されることがあります。
なお、患者の家族や患者を診療した医療従事者が、本疾患を発症した報告はなく、患者の隔離は必要とされていません。
その他、詳細情報は、福岡県感染症情報(http://www.fihes.pref.fukuoka.jp/~idsc_fukuoka/)として、情報提供していますので、ご活用ください。
|