福岡県保健環境研究所
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はじめに
 近年では外来種という言葉が頻繁に使われるようになり、外来種への関心が高まってきています。話題になるのは、ヒアリやセアカゴケグモのように毒のあるものや、アライグマなどのように農作物に大きな被害を及ぼす動物が多くを占めています。また、圧倒的に大繁茂し、水面全てを覆ってしまうブラジルチドメグサ、ナガエツルノゲイトウ、ボタンウキクサなどの水生植物が話題になることもしばしばあります。しかし、陸生の植物が話題になることはあまりありません。陸生の植物でもオオキンケイギクのように特定外来生物に指定され、積極的な対策が求められている種もあります。そこで、今回はこのオオキンケイギクの特徴や防除方法について紹介したいと思います。


オオキンケイギク
 オオキンケイギク(図1)は、北米原産のキク科多年生植物で、高さ30〜70cmになります。5〜7月には橙黄色のきれいな花を咲かせることから、明治中期に観賞用として日本に持ち込まれました。繁殖力が旺盛で強健な植物であり、冬季のグランドカバー効果が高いことや花枯れ姿が汚くないなどの理由から、第二次世界大戦後(1945年以降)には、道路法面や公園等の緑化に利用され、緑化用ポット苗も流通していました。
 しかし、その繁殖力の強さから1970年代には野生化が確認されるようになり、現在では日本全国に生育が確認されています。福岡県においても、道路法面に利用されたものが1990年代には逸出・野生化し、県内広域に生育が確認されています。オオキンケイギクは、道端や荒地、河川敷、海岸砂浜など、あらゆるところに定着し、しばしば大群落をつくることから、在来種との競合が懸念されています。
 このような経緯から、オオキンケイギクは、2006年に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」に基づき、特定外来生物に指定され、飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いが規制されました。その後、2015年には環境省及び農林水産省による「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」[1]において緊急対策外来種に選定されるとともに、「福岡県侵略的外来種リスト2018」[2]においても、最も対策の必要性が高い重点対策外来種に選定されました。

 
*特定外来生物…海外起源の外来種であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼす
  おそれがあるものとして、政令で定めるもの



図1 オオキンケイギクの花と群落の様子


オオキンケイギクの防除
 オオキンケイギクの防除には、一般的に抜き取りと刈り取りの2つの方法が取られています。本種は刈り取りに対する再生力が強く、根茎が残っている場合はたちまち再生してしまいますので、根茎を丁寧に抜き取ることが重要です。しかし、根茎の抜き取りは重労働であることから、駆除面積が広い場合にはあまり適していません。また、根茎を抜き取って土壌がかく乱されると、土壌中に蓄えられている種子が発芽し、多くの芽生えが発生します。そのため、土壌中の種子がなくなり、新たな芽生えが発生しなくなるまで、少なくとも5年程度は駆除を継続する必要があると考えられています。
 一方、刈り取りは、個体を駆除する効果はほとんどありませんが、種子が結実する前(5月上旬)に実施することで、種子の拡散による新たな地域への分布拡大を防止する効果が期待されます。また、刈り取りは、一般的に刈払機等の機械を使って実施するため、駆除面積が広い場合にも有効な方法ですが、一緒に生育している在来種も刈り払ってしまうため、その影響については慎重に判断する必要があります。


オオキンケイギクの処分方法
 特定外来生物は、原則として生きたまま運搬することや保管することができませんので、駆除したオオキンケイギクについては、以下のどちらかの方法で処分をする必要があります。

1 その場で枯死させてから処分する。
   抜き取った個体または刈り取った個体は、ごみ袋等で密封してから2〜3日天日にさらして枯死させたあと、
  各地方公共団体の分別方法に従ってごみに出します。なお、種子は天日にさらしても簡単には死なず、ごみに
  出すことができないため、種子が結実する前に駆除することが重要です。

2 一定の要件を満たすことで、生きたまま運搬し処分する。
   以下の3つの要件を満たした場合に限り、生きたまま運搬することが可能になりますので(特定外来生物による
  生態系等に係る被害の防止に関する法律の規制に係る運用(植物の運搬及び保管)について[3])、駆除した個体
  をすぐに処分することができます。
   @ ごみの焼却施設等への運搬であること
   A 落下や種子の飛散等の逸出防止措置をとっていること
   B 事前に公表された活動であること(いつ駆除を行うかを掲示板、回覧板、ホームページ等で事前に告知する)


今後の課題
 オオキンケイギクは、繁殖力が強いだけでなく、種子が土壌中に蓄えられることから、防除活動は長期に及ぶことになり、いまだ根絶に至った事例はありません。また、オオキンケイギクの認知度も決して高いとは言えず、現在でも人家の庭などに植えられていたり、刈り払われずに意図的に残されたりしているのが見受けられます。したがって、オオキンケイギクが特定外来生物であり、防除の必要性が高い種であることを多くの人々に認知してもらうことが課題です。そして、認知が広がることによって、将来的には地域一体となった長期的な防除活動に繋がっていくものと期待しています。
 本県では、2018年にオオキンケイギク及びアレチウリの防除リーフレット「特定外来生物の駆除にご協力ください!」[4]を作成し(図2)、多くの県民の皆さんに外来種の防除活動を呼び掛けています。
 当所においては、現在、福岡県侵略的外来種リスト2018で重点対策外来種に選定された20種を対象に、これまでに明らかになっている防除手法の知見をまとめた「侵略的外来種防除マニュアル(仮称)」を作成しているところです。今後とも、様々な主体による外来種の防除を推進するため、広く情報発信を行っていきたいと考えています。


図2 外来種防除リーフレット「特定外来生物の駆除にご協力ください!」


参考資料
[1] 生態系被害防止外来種リスト
  (https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist.html)
[2]  外来種について〜外来生物法と侵略的外来種リスト〜
  (http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/sinryakugairai.html)
[3] 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の規制に係る運用(植物の運搬及び保管)について
  (https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/files/150109sekoutuuchi.pdf)
[4] 外来種防除リーフレットを作成しました! 〜特定外来生物の駆除にご協力ください!〜
  (http://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/gairaisyu-kujyo.html)

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特定外来生物オオキンケイギクの防除について
環境科学部 環境生物課 研究員 金子洋平
総務課