福岡県保健環境研究所
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 風邪をひいたり、虫に刺されたり、お腹が痛くなったり…そんな時、皆さんは医薬品を使用しているのではないでしょうか。近年の調査により、使用後の医薬品のうち下水処理等によって完全に分解・除去できず、環境中に残留するものがあることがわかってきました。
 今はまだ、ヒトや生物に影響を与えるほど高濃度で医薬品が環境中に存在するとは考えられていませんが、今後注意して監視していく必要があります。



使用された医薬品の行方
 一言で医薬品といっても、使用する目的や用途が様々であり、内服薬や外用薬など、種類ごとに医薬品の構造や物性(水への溶解度、分解性、酸・塩基性、分子量など)は大きく違うため、環境への分布や蓄積の仕方は異なります。
 例えば、服用された医薬品は、基本的に時間とともに体の中から排泄されます(図1)。しかし、その時に体内に吸収され無効化されるものもありますが、薬効を保持したまま尿や糞として体外へ排泄されるものも存在しています。また、塗り薬や貼り薬も手洗いや入浴により薬効を持ったまま排水に混じることが考えられます。これらの排水は下水処理場や浄化槽で処理されるのですが、一部の親水性や難分解性の医薬品成分が通常の処理では除去されず、河川に放出されて環境中に残留することが報告されています(図2)。




図1 使用された医薬品の動態



図2 河川水中医薬品の検出濃度の比較[1]


医薬品の環境規制についての現状

 河川水中に存在する医薬品は、1980年代に欧米諸国で注目されはじめ、日本でも2000年代より調査が始められています[2]。また、2015年の第4回国際化学物質管理会議において、環境残留性がある医薬汚染物質が新規の政策課題として採択されました[3]
 日本でも厚生労働省から、平成28年3月30日に「新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」が通知されています[4]。これにより、ヒト用医薬品の利点を重視することを前提に、新医薬品の成分が環境中に放出されることで生じる可能性のある環境リスクを、医薬品の開発企業があらかじめ一定程度把握しておくことが求められています。


まとめ

 医薬品は病気を治療する上で欠かせないものでありますが、環境中に医薬品が蓄積された場合、ヒトの健康や環境に影響を与える可能性が考えられます。主に治療効果にだけ目が向けられていた医薬品に、できるだけ環境汚染を避けるという新たな視点が生まれてきており、安心して医薬品を使用していけるように国や企業、地域全体での取り組みが進んでいます。



参考資料

[1] 島崎 大, 西村 哲治, 国包 章一:水道水源における医薬品成分による汚染とその制御(話題, 〈ミニ特集〉これからの治験). ファルマシア 44(8):773-776, 2008.
[2] 鈴木 俊也:水環境中のヒト用医薬品の存在実態及び環境中濃度の予測. 東京都健康安全研究センター研究年報 (63):69-81, 2012.
[3] 環境省:第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)の結果について(お知らせ), 報道発表資料(平成27年10月5日)(https://www.env.go.jp/press/101507.html)(2019年5月14日に利用)
[4] 厚生労働省「「新医薬品開発における環境影響評価に関するガイダンス」について」(平成28年3月30日薬生審査発0330第1号)
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環境中に残留する医薬品について
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