福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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身近な有毒植物に気をつけましょう 保健科学部 生活化学課 主任技師 佐藤 環

はじめに

 近年のアウトドアブームで、山菜採りを楽しむ人が増えています。一方で、食用に適さない有毒な植物を誤って採取し食べたことによる中毒事例がしばしば発生しています。また、家庭菜園で栽培した食用の植物と有毒な観賞用の植物を間違って食べてしまい中毒となる事故も起こっています。
 動物や植物が本来持っている毒素や、食物連鎖によって蓄積される有毒成分を自然毒といいます。特に植物が保有している毒を植物性自然毒といいます。これら植物性自然毒による食中毒はなぜ起きてしまうのでしょうか。また、植物性自然毒による食中毒にならないためには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。

図1

国内における植物性自然毒による食中毒の発生状況

 どんな有毒植物の誤食で食中毒が発生してしまうのでしょうか。
 次の表は厚生労働省がまとめた、平成22年〜令和元年の国内における有毒植物による食中毒発生状況です。事件数が最も多かったのはスイセンの誤食によるもので、57件発生しています。次いで、ジャガイモ、チョウセンアサガオに関連する事件が多く報告されています。

表1 平成22年〜令和元年の国内における有毒植物による食中毒発生状況
植物名間違えやすい植物の例
(厚生労働省「 自然毒のリスクプロファイル 」より)
事件数患者数死亡数
スイセンニラ、ノビル、タマネギ571951
ジャガイモ※親芋で発芽しなかったイモ、
光に当たって皮がうすい黄緑〜緑色になったイモの表面の部分、
芽が出てきたイモの芽及び付け根部分などは食べない。
213270
チョウセンアサガオゴボウ、オクラ、モロヘイヤ、アシタバ、ゴマ15410
バイケイソウオオバギボウシ、ギョウジャニンニク15330
クワズイモサトイモ15300
イヌサフランギボウシ、ギョウジャニンニク、ジャガイモ、タマネギ152210
トリカブトニリンソウ、モミジガサ9173
コバイケイソウオオバギボウシ、ギョウジャニンニク5130
ヨウシュヤマゴボウヤマゴボウ440
観賞用ヒョウタンヒョウタン3200
ハシリドコロフキノトウ、ギボウシ380
キダチタバコカラシナ、カラシ270
ユウガオヒョウタン
※まれに高ククルビタシン含量のユウガオによる中毒もある。
苦みの強いものは摂食しない方がよい。
270
スノーフレークニラ250
ヒガンバナニラ、ノビル、タマネギ120
タガラシセリ110
その他(タマスダレ、ヒメザゼンソウ 等)16530
不明480
合計19079314

 いずれも、有毒植物と食用の植物で、形がよく似ているため、誤認してしまうケースが多いようです。ジャガイモによる食中毒には学校菜園を原因とした集団的な発生事例が含まれ、患者数がとりわけ多くなっています。
図2

植物性自然毒による食中毒の症状

 誤って食べると、どのような症状を引き起こすのでしょうか。次の表には、植物性自然毒による食中毒事例のうち、原因として多かった有毒植物の主な有毒成分と中毒症状を示しています。症状は、食後20分〜3時間程度の短時間のうちに現れます。
 植物性自然毒による食中毒は、最悪の場合、死に至ることもあるため、大変危険です。実際に、令和2年2月、国内において植物性自然毒による死亡事故が発生しています(表1の有毒植物による食中毒発生状況の集計には反映されていない事例)。原因は、グロリオサの球根をヤマイモと誤認したことによるものです。
 また、これらの有毒成分のほとんどは熱に安定であり、調理してもなくなることはないので注意してください。

表2 有毒植物の毒成分と中毒症状
植物名主な有毒成分主な症状
スイセンリコリン悪心・嘔吐、下痢
ジャガイモソラニン・チャコニン下痢、嘔吐、発熱、腹痛、めまい、発語障害、痙攣
チョウセンアサガオアトロピン・スポコラミン口渇、瞳孔散大、心悸亢進、狂騒状態
バイケイソウプロトベラトリン(アルカロイド)嘔吐、下痢、血圧低下、けいれん
クワズイモシュウ酸カルシウム皮膚炎、口腔・舌・口唇・咽頭の浮腫、嚥下困難
イヌサフラン・グロリオサコルヒチン嘔吐、下痢、腹痛
トリカブトアコニチン嘔吐、下痢、手足の麻痺
図3

 より詳しく有毒植物の特徴を知りたい方は、厚生労働省HPをご覧ください。
≪自然毒のリスクプロファイル≫
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

さいごに

 注意 

・食用とはっきり判断できないものは、採らない・食べない・ゆずらないようにしましょう。

・家庭菜園や畑を作る際は、食用植物と観賞用の植物等をきちんと分けて育てましょう。



参考文献

厚生労働省HP:自然毒のリスクプロファイル(令和3年1月20日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/poison/index.html

厚生労働省HP:有毒植物による自然毒に注意しましょう(令和3年1月20日閲覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yuudoku/index.html

朝日新聞デジタル記事 栽培したグロリオサの球根食べる? 80代が食中毒死(令和3年1月20日閲覧)
https://www.asahi.com/articles/ASN275S66N27TLTB00G.html


【厚生労働省からの関連通知】
2019年04月25日掲載
PDF 薬生食監発0425第3号「有毒植物による食中毒防止の徹底について」[193KB]
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000505263.pdf

2018年04月26日掲載
PDF 薬生食監発0426第1号「有毒植物による食中毒防止の徹底について」 [193KB]
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000204851.pdf

2016年05月03日掲載
PDF 生食監発0503第1号「有毒植物による食中毒防止の徹底について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000123475.pdf

2016年04月01日掲載
PDF 生食監発0401第1号「食中毒対策の推進について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000120186.pdf



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