福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
092-921-9940
〒818-0135 福岡県太宰府市大字向佐野39
 
トップページ 研究所紹介 研究概要 年 報 啓発資材 リンク集 アクセス
 トピックス トピックス一覧へ戻る
溶出試験装置が新しくなりました 保健科学部 生活化学課 主任技師 中西加奈子
ジェネリック医薬品を巡る取り組み
 病院で処方されるくすりには、新薬(先発医薬品)とジェネリック医薬品(後発医薬品)、2つの種類があります。
後発医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を使用し、効果が同じものとして製造販売が承認されたものです。また、一般的に開発費用が抑えられるので、低価格です。安価な後発医薬品が普及すれば、患者の経済的負担の軽減や医療保険財政の改善につながると考えられています 。
  そこで、国はこれまで以上に、後発医薬品の普及を進めていこうとしています。例えば、平成27年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」においては、平成32年度末までに後発医薬品の数量シェア*を80%以上とする、新たな目標が設定されました[1]。また、厚生労働省では、平成27 年9 月に「医薬品産業強化総合戦略〜グローバル展開を見据えた創薬〜」を策定し、後発医薬品の使用の加速化を重点項目の一つとしています。そして、加速化に向けた重要な取り組みには、後発医薬品の品質確保対策が挙げられています。
  国が進める品質確保対策は、以下のようなものです。まず、厚生労働省が設置した、ジェネリック医薬品品質情報検討会[2]において、市場流通量が多いものや品質に懸念等が示された品目を中心に、優先順位を付けて品質検査の方針を決定します。次に、この方針に基づいて、国の研究機関や当研究所を含む地方衛生研究所において、品質検査を実施していく、というものです。特に、平成28年度から後発医薬品の品質関連事業が統合され、検査対象品目数も増えるなど、後発医薬品の品質確保対策事業は更に拡大されることとなりました [3]
  これに伴い、当研究所の溶出試験装置(図1)が更新され、本年9月1日から運用が始まりました。今年度から向こう5か年に渡って、後発医薬品の品質検査(溶出試験)を集中的に実施することで、後発医薬品の品質に対する更なる信頼性の向上を図り、普及促進へつなげていこうとしています。
*数量シェア:平成27年9月時点では56.2%
図1 新しい溶出試験装置の外観(大日本精機製 RT-3型)

溶出試験装置とは
 溶出試験装置とは、くすり(医薬品製剤)の品質が保たれているかどうかを、溶出試験法により確認するための装置です。

溶出試験法とは[4]
 溶出試験法は、医薬品製剤の一般試験法として、日本薬局方に収載されている公的試験法であり、溶出試験規格に適合しているかの判定に用います。また、図2に示すような溶出曲線を作成して、各製剤の曲線が類似しているかを比較解析する手法があります。これは、製剤間の生物学的同等性を推定するための一つの手段とされています[5]

図2 溶出曲線の例  図3 ベッセル部分の拡大図

  具体的には、図3に示すような、試験液(37℃一定)を入れたベッセルと呼ばれる容器に、医薬品製剤を投入します。その直後から、一定の速度で撹拌棒(パドル)を回転させて試験液を撹拌します。一定時間経過後の試験液を採取し、製剤から溶出した有効成分量を測定します。
  当研究所に設置された新しい溶出試験装置は、6連のベッセルを備え、試験液及び医薬品製剤の投入から、経時的なサンプリング、吸光度測定、そして測定後の装置洗浄までの一連の操作を、自動で行うことができるのが特徴です。

今後の方針
 今後、国は、後発医薬品の品質確保対策として、品質検査の結果等から、有効成分ごとに後発医薬品の品質に関する情報をまとめたデータシート(ブルーブック)の作成・公表を行おうとしています[3]
  当研究所では、今後も品質検査を通じて、後発医薬品の品質に関する情報提供を継続していく予定です。


参考URL
[1]後発医薬品の使用促進について(厚生労働省ホームページ)
   http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kouhatu-iyaku/
[2]ジェネリック医薬品品質情報検討会ホームページ
  http://www.nihs.go.jp/drug/ecqaged.html
[3]後発医薬品品質情報No.6(厚生労働省ホームページ)
  http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000128220.pdf
[4]第十七改正日本薬局方 <6.10>溶出試験法(医薬品医療機器総合機構ホームページ)
  http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/JP17.pdf
[5]後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(医薬品医療機器総合機構ホームページ)
  http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/meisho.pdf


  ©2016 Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences.