福岡県レッドデータブック

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種の解説

ハビタットおよび保全対策

鳥類にとっての福岡県内の重要なハビタットとそこに生息する絶滅危惧種とその保全対策について記せば以下のようである。

(島嶼)

沖ノ島・小屋島:宗像市。沖ノ島全島は常緑広葉樹の自然林におおわれ,リュウキュウコノハズク,ウチヤマセンニュウ,カラスバト,ハヤブサが繁殖し,またオオミズナギドリの繁殖地となっている。国設鳥獣保護区の特別保護地区や天然記念物「沖の島原始林」に指定されていて,沖ノ島そのものについては生息地破壊の心配はない。属島の小屋島では,カンムリウミスズメとヒメクロウミツバメが繁殖するが,1987年のドブネズミの侵入・捕食による壊滅的な被害の後,徐々に繁殖数が回復途上にあったものの,2009年には再びドブネズミの侵入といくらかの捕食被害が確認された。ヒメクロウミツバメについてはその後繁殖が見られない状態が続いている。また,2010年には沖ノ島で海岸部から林内の広い範囲にドブネズミの生息が確認され,今後,継続的にドブネズミが小屋島へ侵入する危険性が考えられた。小屋島でのネズミ類侵入の監視と駆除,および沖ノ島での駆除対策が求められる。

白島:北九州市。男島と女島からなり,男島は常緑広葉樹林におおわれカラスバトが繁殖し,またオオミズナギドリの集団繁殖地となっている。春秋の渡りの時期には陸鳥の中継地になっている。白島石油備蓄基地があり,大部分が県指定鳥獣保護区の特別保護地区になっている。

大島・地島:宗像市。島の大部分が常緑広葉樹林におおわれカラスバト,ミサゴ,ハヤブサが繁殖する。

志賀島・沖津島:福岡市。冬期には周辺海域でシノリガモ,ウミスズメ等の海鳥が生息し,沖津島ではウチヤマセンニュウが繁殖する。

大机島:福岡市。ウチヤマセンニュウの繁殖地として重要である。

烏帽子島:糸島市。岩礁島で無人灯台があるだけで,県設鳥獣保護区の特別保護地区になっている。カンムリウミスズメの繁殖地であり,ここもネズミ類の侵入による繁殖個体群の崩壊に注意する必要があり,監視が必要である。

姫島:糸島市。自然林化している二次林にはカラスバトの生息が確認されている。

三池島:大牟田市。三井三池炭坑の坑道吸気のために建設された人工島だが,島の砂礫地はベニアジサシの繁殖地の北限となっており,またコアジサシも繁殖する。しかし,植生域の拡大による砂礫地の減少や人工島の老朽化による崩壊の危険など,両種の繁殖コロニーの存続が危ぶまれていて,保全を図るには多くの課題がある。

(水辺)

曽根干潟とその周辺:北九州市・苅田町。約500haの砂泥質の干潟と約650haの水田地帯などの後背地が広がる。ズグロカモメ,ツクシガモ,ダイシャクシギの越冬地であるとともに,カラフトアオアシシギなどシギ・チドリ類の重要な中継地となっている。北九州空港及び苅田港埋立地の造成による干潟前面海域の閉鎖度の高まりや漁港設置などによる底質・水質の変化が今後どのように推移するか気になるところである。また後背地では道路建設が予定されており,今後の道路建設の影響も懸念される。

和白干潟とその周辺:福岡市。砂質干潟と浅海域からなり,後背地には水田のほか住宅地が迫っている。クロツラヘラサギ,ズグロカモメ,ツクシガモが越冬するとともに,ヘラシギ,カラフトアオアシシギなどシギ・チドリ類の重要な中継地ともなっている。人工島の造成により前面海域の閉鎖度が増加し,また水域の富栄養化によるアオサの大量漂着など,環境の劣化の進行が懸念される。

瑞梅寺川河口とその周辺:福岡市。砂泥質の干潟と水田地帯の後背地からなり,クロツラヘラサギ,ヘラサギ,ズグロカモメの越冬地として重要である。ヘラシギ,カラフトアオアシシギなどシギ・チドリ類の重要な中継地ともなっている。

有明海干潟:柳川市・みやま市・大牟田市。有明海に広がる広大な干潟のうち,福岡県部分の20kmほどの海岸線の地先にある干潟である。1970年代までは極めて多数のシギ・チドリ類が渡来していたが,その後,渡来数が激減して現在に至っている。今後の渡来数回復に備える意味でも当地の干潟は重要である。

(平地)

響灘埋立地:北九州市。放置された埋立地にアシ原が形成され,チュウヒの繁殖地となっている。近年のアシ原の減少傾向の中で,一時的に形成されたアシ原での利用であり,継続性の点で問題があり保全が困難と考えられる。

筑後川:久留米市など。九州最大の河川であり,その河川敷でのツバメチドリの繁殖が特筆される。

(山地)

英彦山とその周辺山系:添田町・東峰村・みやこ町など。多くの森林棲鳥類の生息地として知られる。特に県内のクマタカ,コノハズク,ブッポウソウ,コマドリの生息地として重要である。

古処山とその周辺山系:朝倉市・嘉麻市など。英彦山山系とも連なり,クマタカを始めとする森林棲鳥類の重要な生息地である。

釈迦岳とその周辺山系:八女市など。森林棲鳥類の生息地であるとともに,大分県側の森林地帯をも含めてクマタカの繁殖地としての可能性が示唆されている。

脊振山とその周辺山系:福岡市。ミゾゴイ,ヤイロチョウ,コルリ等森林棲鳥類の重要な生息地である。

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