報告書 等(平成11年度,1999年度)

1 保健所の調査企画部門充実のための研修のあり方,体制整備に関する研究
  平田輝昭*, 片岡恭一郎, 甲原隆矢, 篠原志郎
平成11年度厚生科学研究費補助金 健康科学総合研究事業研究報告書, 平成12年3月.
福岡県は平成9年の保健所組織改革で企画部門の組織強化が行われたが,内容の充実のためには体系的研修は不可欠であった.しかし,これまで保健所の保健情報の収集活用のための具体的研修方法についてはあまり検討がなされてこなかった.一方,福岡県には保健情報に関し専門家を擁する保健環境研究所情報管理課があり,その活用,保健所等との連携が課題でもあった.平成9年より,これらを課題として情報処理リーダーの養成に主眼を置き研修のあり方の実践研究を行った.
* 保健福祉部医監
 
2 平成11年度化学物質環境汚染実態調査結果報告書
  飛石和大, 黒川陽一, 桜木建治, 松枝隆彦, 深町和美
平成11年度環境庁報告書(環境庁環境安全課), 平成12年3月.
化学物質の環境安全性確認として化学物質の環境中での残留性を調べるために化学物質の環境中濃度レベルを調査した。大気、水質、底質中の化学物質を一般化学物質及び指定化学物質として分析調査し、その結果について報告を行った。当年度の調査物質は,ジブチル化合物,フェニルスズ化合物,ジフェニルスズ化合物,1,1−ジクロロエタン,1-ブロモ-3-クロロプロパン,アジピン酸ジブチル、トリクロロベンゼン類,テトラクロロベンゼン類,ペンタクロロベンゼン及びヘキサクロロベンゼン、多環芳香族及びPCB、1,4-ジオキサン,4,4'-ジアミノ-3,3'-ジクロロジフェニルメタン、2,4-ジアミノトルエン、3,3'-ジクロロベンジジン,クロロホルム,四塩化炭素1,2-ジクロロエタン及び1,2-ジクロロプロパンであった。
 
3 化学物質による生物・環境負荷の総合評価手法の開発に関する研究(平成9年度)
  世良暢之, 志水信弘, 塚谷裕子, 田中義人, 北森成治, 内海英雄*
未来環境創造型基礎研究推進制度 平成9年度報告書, 平成11年3月.
ヒトや地上の生物は膨大な化学物質,非意図的生成物質などの複合的環境因子の影響に暴露され,その生存が脅かされ始めている.世界で登録されている化学物質は平成10年現在で1800万種類(年間60万種類づつ増加)であり,そのうち日本で日常的に製造使用されている化学物質は約6万種類にのぼり,そのほぼ40%が生活環境中で検出されている.本研究では,哺乳動物などの培養細胞を活用した毒性検出原理の異なる10数種類の簡易生物評価法(バイオアッセイ法)を探索・改良し,複合化学物質に対する最も鋭敏かつ信頼性の高い評価手法を確立することを目的に,平成9年度は慢性毒性を示す30化学物質について検討を行った.当所は,遺伝毒性・発がん性を担当して実施した.
* 九州大学大学院薬学研究科機能分子解析学分野
 
4 化学物質による生物・環境負荷の総合評価手法の開発に関する研究(平成10年度)
  世良暢之, 志水信弘, 塚谷裕子, 田中義人, 北森成治, 内海英雄*
未来環境創造型基礎研究推進制度 平成10年度報告書, 平成11年3月.
平成10年現在での化学物質データーベース(Chemical Abstract)の登録化学物質は1800万種類にのぼり,これらの化学物質,非意図的化学物質,未知物質による複合的環境ストレスが生物個体の調節機構を破綻し,発がんや臓器障害,炎症の成因となる事例が報告されている.本研究ではこれら化学物質の次世代までの影響を評価できるバイオアッセイ法を新たに確立し,環境管理するための考え方を提案することを目的とする.当所は,遺伝毒性・発がん性を担当して実施した.
* 九州大学大学院薬学研究科機能分子解析学分野
 
5 ディーゼル排気による慢性呼吸器疾患発症機序の解明とリスク評価に関する研究
  世良暢之, 嵯峨井勝*, 市瀬孝道*, 熊谷嘉人*, 宮原祐一*, H.B.Lin*, 小林隆弘*, 藤巻秀和*, 古山昭子*, 田村憲治*, 本田靖*
国立環境研究所特別研究報告(平成5−9年度), 平成11年3月.
日本の大気汚染は従来の硫黄酸化物,降下煤塵を中心とした固定発生源から二酸化窒素や浮遊粒子状物質を主体とした移動発生源型汚染に移りつつあり,一方で気管支喘息や花粉症のようなアレルギー性呼吸器疾患が増加しており,両者間の因果関係の解明が重要な問題になってきている.そこで本研究においてはディーゼル排気微粒子の個人暴露量の推定と人の健康に及ぼす影響を評価することを目的に動物実験を主体に実験を行った.その結果,ディーゼル排気微粒子による喘息様病態の誘発,アレルギー性鼻炎の憎悪,肺がんの発生,マウス精子形成能の低下,アトピー性皮膚炎の増強,自己免疫疾患としての関節炎の悪化等について明らかにした.
* 国立環境研究所地域環境研究グループ
 
6 サルモネラの病原性と疫学に関する研究報告書
  村上光一, 中山 宏, 世良暢之, 堀川和美, 高田 智
福岡県報告書, 平成12年3月.
サルモネラの食品,環境水,養鶏場,及び鶏卵選別場での分布を調査した.その結果,様々な血清型のサルモネラがヒトの生活環境中に広く分布していることが明らかとなった.これらサルモネラのうち S. Enteritidis は産卵鶏養鶏場や鶏卵選別場などに,特に集中して分布しており,鶏卵からも,高率に分離された.一方,S. Infantis はブロイラー農場,食鳥処理施設および鶏肉から高率に分離された.分子疫学的にこれらの S. Enteritidis 及び S. Infantisの生態を検討した.その結果,いずれの血清型においても,その中の一部のごく限られたクローンが,他のクローンに比較し広範な環境に存在し,かつヒトの食中毒の原因となり続けていたことを明らかにした.
 
7 鶏の液卵のサルモネラ検査法解説<培地写真集>
  村上光一, 中山 宏, 世良暢之, 堀川和美, 高田 智
福岡県報告書, 平成12年3月.
平成10年11月に食品衛生法の施行規則及び食品,添加物等の規格基準が改正され,鶏の液卵の規格基準が新たに制定された.これに伴い,検査法も米国や欧州連合の検査法を参考とした新たな検査法が厚生省より示された.この新検査法は,従来日本であまり使用されていない種類の培地等を多く用いるものである.このため,この検査法あるいは,この検査法で用いる培地に関する解説書が必要となった.そこで,カラー写真を多用した解説書を作成し,県内の保健所検査課等の関係諸機関に配布した.
 
8 環境ホルモン等化学汚染物質の高度検査における検査データの信頼性確保に関する研究
  加藤元博, 門上希和夫*1, 松原英隆*2, 飯田隆雄, 中川礼子, 竹中重幸, 梶原淳睦, 飛石和大, 上原真一*3
平成11年度厚生科学研究費補助金 厚生科学特別研究事業研究報告書−感染症対策を含めた健康危機管理対策における地方衛生研究所の在り方に関する調査研究, 90-121, 1999.
化学汚染物質による健康危機管理の重要性が増大し,信頼性あるデータの提供とそのための分析体制の整備は重要な課題である.そこで全国73地研に対するアンケート調査を実施し,問題点の洗い出し及び解析を行った.その結果,環境ホルモンなどの化学汚染物質の高度な検査においても,項目を選定し,基準を設定する等内部精度管理の部分実施により,検査データの信頼性を高めることができると考えられたことから,分析に影響を及ぼす因子を洗い出し,その対策と実施の可能性,さらにその手法について検討を行った.分析体制の整備については、予算及び人員の確保の他,専門性を持った人材の育成に大きな問題があること,施設維持及び分析コストに加え,ダイオキシン類汚染物質のように廃棄不可能な物質の保管,処理など様々な障害が予想されることから,将来的な展望に立った整備計画が必要である.
*1 北九州市環境科学研究所, *2 福岡市保健環境研究所, *3 東京都立衛生研究所
 
9 福岡県におけるHIV-1の分子疫学
  千々和勝己, 石橋哲也, 森良一, 柏木征三郎*
厚生科学研究,エイズ対策研究事業,HIV感染症の疫学研究,平成10年度研究報告書, 348-351, 1999.
HIV-1感染者43名について,リンパ球中のHIV-1プロウイルスDNAのenv及びgag領域の塩基配列を決定し,分子系統樹解析を行ってサブタイプを決定した.その結果,福岡県においてもサブタイプB以外のAやEが存在することが明らかになり,さらに,外国人においてC/AやC/E(gag/env)のリコンビナントの可能性がある例が各 1 例見出された.このように,福岡県においてもサブタイプの多様化が進行していることが明らかになり,今後もサブタイプの分布について監視を続ける必要がある.一方,研究開始以来継続しているHIV-1のウイルス分離では,本年度は新たに11株を分離し,これまでの分離株の合計は141株となった.
* 九州大学医学部
 
10 地方衛生研究所の機能の強化に関する総合的研究「調査研究機能の強化に関する研究」
  加藤元博, 堀川和美, 梶原淳睦
平成11年度厚生科学研究費補助金 健康科学総合研究事業研究報告書, 1999.
地方衛生研究所の知的,人的,物的,資産の共有化と有効活用事業として,研究業績集の検索効果向上ためシソーラスファイルの検討,研究評価のあり方を検討するための実態調査及び有機的連携のためのモデル研究として,「細胞付着性大腸菌の実態の把握とその検査法の確立に関する共同研究」を実施し,地方衛生研究所の調査研究機能の強化方法を検討した.
 
11 ダイオキシン類の排泄促進に関する研究
  森田邦正, 飛石和大
平成11年度厚生科学研究,生活安全総合研究事業,総括研究報告書, 1-57, 2000.
クロロフィル含有量の多い緑色野菜は,ダイオキシン類の吸収を抑制し,糞中へ排泄促進する作用があることが判明した.このことから,動物実験ではラットにクロロフィルを投与し,クロロフィルがダイオキシン類を糞中に排泄促進し,体内蓄積を防ぐ作用について検討した.2,3,7,8-TeCDDの場合,0.01〜0.5%クロロフィル群の糞中排泄量は基本食群に対して64〜1310%の増加が認められた.2,3,4,7,8-PeCDFの場合,0.01〜0.5%クロロフィル群の糞中排泄量は基本食群に対して77〜1460%の増加が認められた.クロロフィル投与量とダイオキシン類の排泄量及び体内負荷量との間には有意な相関関係が認められた(p<0.01).本研究結果より,クロロフィルはダイオキシン類の消化管吸収を抑制し,糞中へ大幅に排泄促進する作用があることが明らかとなった.ダイオキシン類による健康影響を未然に防ぐ食生活の方法として,クロロフィル及び食物繊維含有量の多い緑色野菜(小松菜,みつば,ほうれん草,青じそ等)を多く摂ることが重要である.
 
12 食品中のダイオキシン汚染実態調査研究(平成10年度)その1:トータルダイエットからの1日摂取量
  豊田正武*1, 飯田隆雄, 内部博泰*2, 柳俊彦*2, 河野洋一*2, 堀就英
厚生省報告書(厚生省生活衛生局), 1999.
ダイオキシン類の食品を介した人への暴露状況を把握するために,全国7地区で集めたマーケットバスケット方式によるトータルダイエット試料(14食品群,10試料)を分析し,通常の食品から摂取されるダイオキシン量を求めた.同時にダイオキシン類摂取量の経年変化を把握するため,1977年から1995年の19年間の保存トータルダイエット試料(13食品群,5試料)について分析し遡及的に摂取量の傾向を推計した.ダイオキシン類の1日摂取量は平均99.8±24.6pg TEQ/day(範囲61.1−136.0pg TEQ/day)であった.これは体重1kgあたりの摂取量平均2.00pg TEQ/day(範囲1.22−2.72pg TEQ/day)に換算され,我が国の耐容1日摂取量以下となっていた.また,ダイオキシン類の1日摂取量は過去22年間で明らかに減少(約1/3)していた.
*1 国立医薬品食品衛生研究所, *2 (財)日本食品分析センター
 
13 食品中のダイオキシン汚染実態調査研究(平成10年度)その2:個別食品中ダイオキシン濃度及び調理加工の影響
  豊田正武*1, 飯田隆雄, 内部博泰*2, 柳俊彦*2, 河野洋一*2, 堀就英
厚生省報告書(厚生省生活衛生局), 1999年10月29日.
ダイオキシン類の食品を介した人への暴露状況を把握するために,個別食品(38種197検体)の汚染状況を調査し,また調理加工によるダイオキシン類濃度の推移についても検討した.個別食品では魚介類中の濃度が最も高く,平均1.468pg TEQ/gであった.また,市販品及び露地栽培のほうれん草を用い,水洗浄と煮沸によるダイオキシン類含有量の変化を調べた.この結果,水洗いによりダイオキシン類濃度は3〜4割減少し,煮沸操作により更に1/2〜1/3に減少することが明らかとなった.
*1 国立医薬品食品衛生研究所, *2 (財)日本食品分析センター
 
14 第26回環境保全・公害防止研究発表会特集 −水質T(水質・底質調査)の発表について−
  近藤紘之
全国公害研会誌, 25(1), 15, 2000.
第26回環境保全・公害防止研究発表会の水質T(水質・底質調査)の座長を努めた.本セッションは,河川に関する汚濁解析及び水田農薬の流出特性に関する発表とダム湖の無酸素層の消長,人工海浜の底質調査についての計4題の発表であった.
 
15 行橋市生活排水推進計画
  中村融子, 田上四郎, 緒方健, 須田隆一, 杉泰昭, 山崎正敏, 大崎靖彦
行橋市生活排水推進計画書, 1-72, 1999.
福岡県は平成10年3月に行橋市全域を「生活排水対策重点地域」に指定した.行橋市はこれを受けて,生活排水対策を推進するため,「行橋市生活排水対策推進計画」を策定した.この計画は、公共下水道の整備等のハード事業及びイベントの開催や清掃活動等のソフト事業を,市民,事業者,行政が一体となって推進し,平成24年までに生活系汚濁負荷量を65%削減しようとするものである.
 
16 生活排水対策重点地域指定に係る事前調査報告書 -城島町,大木町及び三潴町-
  中村融子, 永淵義孝
生活排水対策重点地域指定に係る事前調査報告書, 1-28, 2000.
城島,三潴両町に関わっている山の井川の天竺橋及び大木町を貫流する花宗川の酒見橋(大川市)では,水質汚濁に係る環境基準(BOD)が,過去5年間(平成5〜9年)一度も達成されていない.また,水質現況調査の結果からクリークについてもその水質が悪化していると考えられた.さらに,背景調査の結果から,三町全流域からの全BOD排出負荷量は,1767.3kg/日で,生活系排水による排出負荷量は,1318.1kg/日と推計され,これが,全BOD排出負荷量の74.6%を占めることがわかった.また,生活雑排水に起因するBOD排出負荷量が,全生活系排水による排出負荷量の93.8%と大部分を占めていた.これらのことから,城島町,大木町及び三潴町に係る河川及びクリークの浄化を進めるにあたっては,生活排水対策,特に,生活雑排水に関する対策を早急に行う必要性が示唆された.
 
17 平成11年度硝酸性窒素総合対策推進事業報告書(福岡県県南地域における浄化システム調査)
  馬場義輝, 松尾宏, 中村融子, 永淵義孝
平成11年度硝酸性窒素総合対策推進事業報告書, 1-12, 2000.
平成12年1月6日に,福岡県県南地域に硝酸性窒素浄化施設を設置し,地下水中の硝酸性窒素の除去実験を行った.浄化施設は2ヶ月間の馴化により実験井戸水中の硝酸性窒素濃度の78%が除去される状況に達した.しかしながら原水の硝酸性窒素濃度が41mg/lあるため,浄化施設の排水口の硝酸性窒素濃度を10mg/l以下まで低下させるのは簡単ではない状況であった.また,浄化施設の脱窒処理施設の立ち上げ時に,脱窒が不十分なため,亜硝酸性窒素や亜酸化窒素が発生する現象が認められた.
 
18 硝酸性窒素地下水汚染対策検討調査報告書(福岡県県南地域の汚染機構解明調査)
  松尾宏, 馬場義輝, 中村融子
硝酸性窒素地下水汚染対策検討調査報告書, 1-27, 1999.
農作物の中でも比較的窒素施肥量の多い茶畑において,窒素フロー収支及び隣接する溜池水質の調査を1997年−1999年の間,環境庁の委託により実施した.降水,蒸発散量,茶畑流出水(湧水+表面流出水)及び深層への地下浸透水量などの水収支を検討した.水収支で得られた数値を基に茶畑での窒素収支を求めた.第1調査年(1997.6−1998.5),第2調査年(1998.6−1999.5)の窒素量のインプット1216kg/ha,827kg/haに対してアウトプットは1308kg/ha,738kg/haでほぼ収支バランスが得られた.第1調査年の窒素施肥量1192kg/haに対し,第2調査年は827kg/haと減量が実施された.施肥量の減少に伴い茶畑流出水の硝酸性窒素濃度は35mg/lから28mg/lまでの減少傾向を示した.また第1調査年でみられた梅雨期のphの異常低下も,第2調査年では小さくなった.
 
19 穂波町生活排水対策推進計画(平成11年度)
  永淵修, 志水信弘, 緒方健, 須田隆一
穂波町生活排水対策推進計画, 1-75, 2000.
穂波町を流下する河川の有機汚濁は生活系排水が90%以上を占める.本推進計画は,生活系負荷を削減することで穂波町の河川を少しでも自然に調和したものにしようとするものである.内容は,ハード・ソフト事業を組み合わせて15年後の目標水質を定め,その目標に向かって町全体で取り組もうとするものである.
 
20 平成11年度環境庁委託業務結果報告書・酸性雨モニタリング調査
  永淵修, 大崎靖彦
平成11年度環境庁委託業務結果報告書 酸性雨モニタリング調査, 1-44, 1999.
本報告書は背振ダム湖,流入河川の水質調査,その成因・環境に関する既存のデータをまとめることにより,湖沼の酸性化に対する緩衝能等について検討したものである.本ダム湖の集水域はほとんどが森林であるが,流入河川の一つである河内川流域に畜産牧場がある.このため,春季から夏季にかけて湖内で藻類の活動が見らられる.ただし,他の時期の湖水のpHは低い水準にある.また,流域の母岩は花崗岩であり,酸性降下物に対する緩衝能は低いと考えられる.しかし,流入河川の化学型はNa-Ca-HCO3型であり,土壌の緩衝能がまだ十分あることを示している.
 
21 屋久島へ飛来する大陸起源の大気汚染質
  永淵修
陸水通信(日本陸水学会会員情報誌), 19, 5-8, 1999.
樹氷に含まれる化石燃料の燃焼に由来する粒子についてその種類・発生因・移流・起源について言及した.特にIASと呼ばれる無機系の粒子は石炭燃焼由来であり,流跡線解析の結果から大陸起源の可能性が高いことを示した.
 
22 有害金属の形態別分析技術の開発と地下水汚染機構解明に関する研究(平成8年度−10年度)
  石黒靖尚, 大野健治, 鳥羽峰樹, 近藤紘之
「有害金属の形態別分析技術の開発と地下水汚染機構に関する研究」処理技術研究委員会報告書, 1999.
わが国において地下水は,生活用水の25%を賄っており,ヒ素等の有害金属による地下水汚染対策は重要な課題である.このような背景から,本研究では,活性アルミナ吸着法を用いた実プラントにおけるヒ素処理状況調査,NF膜ろ過によるヒ素除去試験,市販家庭用浄水器のヒ素除去能に関する試験,カキ殻を用いたヒ素除去試験等を行い,吸着法による処理が安定かつ低コストなヒ素除去法の一つであることを確認した.また,NF膜ろ過法は,ファウリング,高コスト等の問題が解決されればヒ素除去法として有用であることを明らかとした.
 
23 ヒ素等有害金属の地下水汚染機構の解明及びその浄化に関する研究
  近藤紘之, 石黒靖尚, 大野健治, 鳥羽峰樹
ヒ素等有害金属の地下水汚染機構の解明及びその浄化に関する研究(平成8年度−平成10年度地域密着型環境研究), 1999.
平成6年に明らかとなった福岡県県南地域のヒ素による地下水汚染は調査の結果,地質由来の自然的汚染であると結論された.しかし,ヒ素の地質からの溶出機構については不明な点が多く,その解明と簡易なヒ素除去技術の開発を目的に本研究を実施した.その結果,1)地下水の電解質,特にCa2+,OH-,PO43-などイオン種と地質中のヒ素化合物との相互作用,及び2)酸化還元作用の2つの寄与が明らかになった.また,除去技術に関しては,NF膜,市販浄水器及びカキ殻による方法を検討し,NF膜ろ過によりヒ素は非常に効率的に除去できることが明らかとなったが,ヒ素を高濃度に含む濃縮排水の処理等の問題があり,これらを解決する必要があると考えられた.市販の浄水器については,据え置きタイプであればかなりの効果が認められた.
 
24 福岡県内ダム湖の水質及び植物プランクトンの推移 -日向神ダム湖,力丸ダム湖,広川ダム湖-
  笹尾敦子
湖沼環境の変遷と保全に向けた展望(高村典子編),国立環境研究所報告, 第153号, 228-237, 2000.
1996年春,夏,秋に福岡県内の日向神ダム湖,力丸ダム湖,広川ダム湖の水質と植物プランクトンの調査を実施しそれらの現状を把握し,さらに,これらのダム湖の水質と植物プランクトンに関する過去のデータを解析し,それらの推移を考察した.日向神ダム湖では1996年6月は珪藻類が優占し,9月は褐色鞭毛藻類,珪藻類が多かった.経年的(1994-1996)に水質は比較的良好であった.力丸ダム湖では5月は珪藻類が多く,7月は緑藻類が優占し,10月は植物プランクトンが少なかった.経年的(1984-1996)には冬季の淡水赤潮,春季の珪藻類によるブルームが起こり,栄養塩類の緩やかな増加からも富栄養化が進行しつつあることが窺えた.広川ダム湖では1996年6月は植物プランクトンは少なく,7月は珪藻類が優占し,9月にはMicrocystisによるアオコが湖面を占めた.経年的(1992-1996)には豊富な栄養塩を含む河川水流入により他の2ダム湖に比べ過栄養状態であった.
 
25 廃棄物埋立処分に起因する有害物質暴露量の評価手法に関する研究
  森田昌敏*1, 白石寛明*1, 堀口敏宏*1, 吉永淳*1, 西川雅高*1, 平田健正*2, 中杉修身*1, 安原昭夫*1, 山本貴士*1, 白石不二雄*1, 植弘崇嗣*1, 占部武生*3, 大野勝之*4, 奥村為夫*5, 小野雄作*6, 川越保徳*7, 川田邦明*4, 貴田晶子*8, 剣持堅志*9, 近藤紘之, 佐々木裕子*10, 薩摩林光*11, 白子定治*3, 神和夫*12, 中野武*13, 永瀬誠, 野馬幸生*8, 馬場謙三*14, 福井博*15, 福島実*7, 松藤康司*16, 森田啓次郎*9, 安田憲二*15, 大和康博*14
国立環境研究所特別研究報告, 1999.
埋立処分場から発生する浸出水,漏出水による周辺の水質汚染や,そこに含まれる有害物質による人や生態系への影響が懸念される.しかし,埋立処分場の浸出水中に含まれる化合物の実態やその毒性については,ほとんど調査研究がなされておらず,また,埋立処分場から発生する有害な揮発成分による環境汚染もその実態が明らかでない.従って,埋立地に由来する汚染物質の検出法及び特定法の高度化,埋立処分にかかわる有害物質暴露量評価手法及びモニタリング手法についての研究を行った.
*1 国立環境研究所, *2 和歌山大学, *3 東京都清掃研究所, *4 新潟県保健環境研究所, *5 大阪府公害監視センター, *6 埼玉県公害センター, *7 大阪市立環境科学研究所, *8 広島県保健環境センター, *9 岡山県環境保健センター, *10 東京都環境科学研究所, *11 長野県衛生公害研究所, *12 北海道立衛生研究所, *13 兵庫県立公害研究所, *14 北九州環境科学研究所アクア研究センター, *15 神奈川県環境科学センター, *16 福岡大学



 


研究内容の紹介ページへ研究業績一覧(平成11年度,1999年度)へ直前のページへ戻る


トップページへ



・当サイトのコンテンツを無断転用することを禁じます。
・当サイトへリンクする時は電子メール等でお知らせください。

本ホームページの著作権は福岡県保健環境研究所に所属します。
Copyright (C) 2002  Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences. All Rights Reserved.