論文等発表(平成13年度,2001年度)

1 Association between Blood Concentration of Polychlorinated Biphenyls and Manifestations of Symptoms and Signs in Chronic "Yusho" Patients from 1986 to 1997
  Shoji Tokunaga*, Kyoichiro Kataoka
Fukuoka Acta Medica, 92(5), 122-133, 2001.
 1986年から1997年までの12年間の全国油症患者追跡検診結果をもとに,認定患者について年度毎に自他覚症状の有所見率と血中PCB濃度の間の関連を検討した.各年毎に内科・皮膚科・眼科の自他覚症状の有/無所見を目的変数に,血中PCB濃度(対数変換値)を説明変数として性・年齢を調整したlogistic回帰分析を行った.皮膚科検診項目のうち黒色面皰(躯幹)とざ瘡様皮疹(外陰部と臀部)の有所見率は血中PCB濃度と統計学的に有意な正の関連を示すことが12回の検診中5回以上で,他の症状に比べて特に多かった.これらの項目が血中PCB濃度と正の関連を示す傾向は,油症患者全国統一検診が開始されて以来減少が見られず,将来も継続すると予想される.
* Kyushu University
 
2 ICD-9死因分類からICD-10死因簡単分類への変換
  片岡恭一郎, 甲原隆矢, 篠原志郎
福岡県保健環境研究所年報, 28, 63-71, 2001.
 1993-1997年の死因別SMRを計算するためにICD-9とICD-10の死因分類の変換について検討した.
 その結果,ICD-9の簡単分類とICD-10の死因簡単分類に共通して分類された死因は呼吸器結核(死因コード1201),心不全(9201),他殺(20300)など38死因だった.これに子宮の悪性新生物(2113)及び脳内出血(9302)を加えた40死因が簡単分類法での変換が可能だった.これらの死因は全死因102分類中の39%を占めた.また,中間項目の25死因のうち,感染症及び寄生虫症(1000),結核(1200),ウイルス肝炎(1400),心疾患(9200),脳血管疾患(9300),循環器系の疾患(9000)など15死因(全体の60%)も簡単分類法での変換が可能だった.一方,一致が不完全だった死因簡単分類の25死因とICD-10から新たに死因簡単分類に取り上げられた37死因を加えた62死因及び中間項目の10死因はICD-9の原死因基本分類からICD-10の死因簡単分類への変換が必要だった.
 
3 地球観測衛星データの環境分野における利用 −地域スケールの衛星リモートセンシング−
  大久保彰人
環境管理, 30, 34-43, 2001.
 福岡県域を対象とした地域スケールの衛星リモートセンシング解析として,土地被覆分類,土壌水分の推定および温暖化に関連した二酸化炭素吸収源評価について述べた.まず,リモートセンシングの原理およびその環境分野における利用についてまとめた.そして,土地被覆分類の手法,地表面粗さを補正した土壌水分の推定および森林植生の変化抽出について述べた.特に,吸収源評価のための森林植生における変化抽出の解析では,マイクロ波のレーダデータにより、樹高の変化を抽出可能かどうかを,多時期のデータを使って試した結果を紹介した.
 
4 防音壁の遮音性能に及ぼす音源指向性の影響
  松本源生, 藤原恭司*, 尾本章*
日本音響学会誌, 57(4), 272-281, 2001.
 騒音制御に有効な手段として広く用いられる遮音壁に関して,その減音効果は前川チャートに代表されるように騒音源の音響放射が全ての方向に一様な無指向性音源と仮定して算出されている.しかしながら,実在する騒音源の音響放射には指向性がある.本研究では音響放射の指向特性を考慮して,現在用いられているものより優れた減音効果の評価方法を確立した.建造物などの大きさを無視できない指向性音源に対しては,減音効果を精度良く算出する数値計算モデルを開発し,音源としての大きさが無視できる指向性音源に対しては,減音効果の近似算出方法を開発した.
* 九州芸術工科大学
 
5 Directivity of the sound radiated from a factory building
  Gensei Matsumoto, Kyoji Fujiwara*, Akira Omoto*
Acoustical Science and Technology, 22(6), 434-436, 2001.
 建物等の固定音源による音響放射について,音響理論を用いた数値計算により建物周辺の指向特性を求める簡易な計算手法を開発した.この手法を用いた計算結果と1/10縮尺模型実験結果との対比をおこない,手法の妥当性を証明した.更に,建物屋根よりも側壁に強度の大きな建築材料を用いた場合,音響放射は垂直方向に強くなることを数値計算により明らかにした.
* Kyushu Institute of Design
 
6 活性アルミナ吸着法を用いた飲用地下水中のヒ素除去
  石黒靖尚, 鳥羽峰樹, 近藤紘之, 松本尚久*1, 井上剛*1, 堀ノ内和夫*2, 芦谷敏夫*2
資源環境対策, 37(14), 1451-1458, 2001.
 ヒ素濃度が基準値を超過している原水を水源とする小規模水道に設置された,活性アルミナによるヒ素除去施設について,その処理状況を平成9年7月〜11年2月にかけて調査した.その結果,原水のヒ素濃度は0.037〜0.082mg/lであったが,ヒ素の除去率約96.2%で,No.2吸着塔出口において約480日間基準値を超過することなく処理されていた.また,活性アルミナの分析結果から,活性アルミナはヒ素と同様にリンに対しても強い吸着力を持つため濃度が高い場合は拮抗的に妨害すること,一方,ケイ素は殆ど除去されず素通りの状態であったが,ヒ素と比較して濃度が非常に高いため,活性アルミナ粒子の内部まで吸着しており,ヒ素の内部への侵入を妨害している可能性が示唆された.
*1 福岡県南広域水道企業団, *2 住友化学工業(株)
 
7 公害防止管理者試験 よく出るダイオキシン類問題
  三宅正志*1, 姫野清*2, 飯田隆雄
オーム社(東京), 1-228, 2001.
 ダイオキシン類特別措置法の施行に伴い,特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(管理者法)にダイオキシン類の公害防止管理者が追加された.本著は公害防止管理者の資格取得を目指す者を対象として,受験準備を効果的に進めるのに役立つように作成されている.4章構成で,第1章:公害概論では,ダイオキシン類に関する高度な知見を紹介し,第2章:ダイオキシン類関係法令では、関係法令を体系的に整理し詳解した.第3章:ダイオキシン類の排出防止・処理技術では,処理技術の現状を詳解した.第4章ダイオキシン類関係測定技術では,原理及び具体的な測定方法について解説した.受験者の理解度を確認できるように各章には演習問題及び予想問題を掲載した.
*1 三宅技術士事務所, *2 DyStar UK研究所
 
8 Effect of Dioxin in Mother's Milk on Sister Chlorinated Exchange Frequency in Infant Lymphocytes
  Junya Nagayama*1, Mayumi Nagayama*1, Takao Iida, Hironori Hirakawa, Takahiro Matsueda, Takashi Yanagawa*1, Jun'ichiro Fukushige*2
Fukuoka Acta Med, 92(5), 177-183, 2001.
 総合的で,鋭敏な遺伝毒性の指標である姉妹染色分体交換 (Sister chromatid exchange, SCEs) 頻度を生後1年前後の乳児の血液リンパ球細胞を用いて調べた.母乳を汚染しているダイオキシン類の遺伝毒性を評価するために,乳児の血液リンパ球細胞のSCEs頻度との関連性を調べた.その結果,ダイオキシン類はいずれのSCEs頻度とも有意の関連性を示さなかった.このことから,母乳を汚染しているダイオキシン類は生後1年前後の乳児の血液リンパ球細胞のSCEsを誘発するような遺伝毒性を生じないと考えられた.
*1 Kyushu University, *2 Fukuoka Children's Hospital
 
9 乳酸菌 Lactococcus lactis IO-1 が産生するバクテリオシン・ナイシンZの抗菌活性
  田中義人*, 堀川和美, 中山宏, 塚谷裕子, 北森成治
福岡県保健環境研究所年報, 28, 95-100, 2001.
 乳酸菌 Lactococcus lactis IO-1 が産生するバクテリオシン・ナイシンZの腸管系病原微生物に対する抗菌活性を検討した.その結果,ナイシンZは液体培地及び寒天培地中において,グラム陰性菌には抗菌活性を示さなかったが,グラム陽性の黄色ブドウ球菌,セレウス菌,ボツリヌス菌及びウエルシュ菌に対して25 IU/ml−800 IU/mlで抗菌活性を示すことが明らかになった.また,その抗菌性はEDTAや市販の抗菌剤と併用することにより,活性の増加及び補完効果が見られた.ナイシンZは乳酸菌が産生する抗菌性のペプチドで,人体に影響がなく,かつ,食品の味や風味に影響を与えないことから食品への利用が期待される.
* 環境部環境政策課
 
10 新しい試験菌株を用いたエームス試験の有用性について −255化学物質についての検討−
  世良暢之, 塚谷裕子, 志水信弘, 田中義人*1, 北森成治, 内海英雄*2
福岡県保健環境研究所年報, 28, 72-76, 2001.
 従来から用いられている試験菌株(TA98,TA100など)に加え,新しい試験菌株(YG1041,YG1042,YG3003,YG7108など)を用いてエームス試験を行った.両菌株の感受性,選択性及び操作性を調べるため,255化学物質について検討した.その結果,従来株にニトロ還元酵素やO-アセチル転移酵素を導入した新しい試験菌株は,従来株より高感受性で,ニトロ化合物,アミノ化合物,酸化型変異原やアルキル化剤に選択的に変異原性を示した.また,代謝活性化法として古くから用いられているチトクロームP450酵素を誘導したラット肝臓と比較する意味で,人由来肝臓を用いて検討を行った.その結果,人由来肝臓を用いた代謝活性化系においても変異原性を測定できることが明らかとなった.
*1 環境部環境政策課, *2 九州大学
 
11 簡易生物評価法の開発と問題点 8-ヒドロキシグアニン試験について
  世良暢之, 志水信弘, 塚谷裕子, 田中義人*1, 北森成治, 内海英雄*2
福岡県保健環境研究所年報, 28, 77-82, 2001.
 活性酸素によるDNA障害を測定する指標として,グアニン塩基の損傷産物である8-ヒドロキシグアニン(8-OH-Gua)がある.8-OH-Guaは従来高価な機器である高速液体クロマトグラフ(HPLC)で測定されていたが,8-OH-Guaのモノクローナル抗体を作成し,競合的酵素免疫測定法(ELISA)で測定する簡易な代替法を考案した.このELISAは HPLCとよい相関を示し(r2=0.91),10nM〜1mMの幅広い範囲の8-OH-Guaを測定できた.またこのELISAを応用して抗変異原物質について検討したところ,ルテオリン,モリン,ミリセチンなどが8-OH-Guaの生成を抑制することが明らかとなった.
*1 環境部環境政策課, *2 九州大学
 
12 Environmental survey of salmonella and comparison of genotypic character with human isolates in Western Japan
  Koichi Murakami, Kazumi Horikawa, Toshihiro Ito*, Koichi Otsuki*
Epidemiol. Infect., 126, 159-171, 2001.
 サルモネラの生態を把握するため,1995年から1998年にかけて,様々な試料におけるサルモネラ汚染状況を検討した. 鶏肉生産関連環境では S. Infantis が主な血清型であった.これに対し,サルモネラ・エンテリティディスサルモネラ・インファンティス (S. Enteritidis) は鶏卵生産環境に非常に偏って存在していた.パルスフィールド・ゲル電気泳動法による134株のサルモネラ・エンテリティディス (S. Enteritidis) のパルスフィールド・プロファイルは18の型に分類された.このうち,鶏卵選別場および産卵軽養鶏場の鶏糞から分離された34株は,1997年に福岡県で発生した食中毒と同様の型を持つ株であった.これらのことは,一つの限られた,遺伝型を有するS. Enteritidis が産卵鶏という保有体に,変異をすることなく,長期間存在し,西日本において食中毒を起こし続けてきたことを意味する.このような結果は,サルモネラの分布と食中毒発生の機構の解明において有意義な発見である.
* Tottori University
 
13 Degradation of dioxins in contaminated environment by white rot fungus
  Satoshi Takada
The Waksman Foudation of Japan Inc. 2000, 192-194, 2001.
 白色腐朽菌によってダイオキシンが分解されることを明らかにしたが,その白色腐朽菌は長期間の保存によって,分解能力が低下することが判明した.この研究では白色腐朽菌のなかで代表的な菌株であるPhanerochaete chrysosporiumを用いて,その分解能力を回復する方法を検討した.その結果,保存株をビタミンB1及びアスパラギンを含むポテトデキストロース寒天培地に植継ことによって分解能力が回復することが分かった.また,ダイオキシンの四及び八塩化物を用いて代謝物の検索を行った結果,ダイオキシン骨格のエーテル結合が開裂した化合物が確認できた。更に,白色腐朽菌をダイオキシンで汚染された土壌修復に用いるため,その基質について検討し,木粉と米ぬかの組み合わせが最もよかった.
 
14 A型インフルエンザウイルスに対する塩酸アマンタジン使用の問題点
  辻克郎*1, 岩橋潤*1, 今村宣寛*1, 吉本静志*2, 梶原淳睦, 石橋哲也, 森良一, 山田達夫*3, 豊田哲也*1
ウイルス, 51(2), 135-141, 2001.
 A型インフルエンザウイルスは高齢者においてはしばしば肺炎を併発し,致死率も高い.その対策として,ワクチンの他にアマンタジンが注目されるようになった.アマンタジンはこれまで脳梗塞後後遺症による抑うつ及びパーキンソン病(症候群)の治療として,広く用いられている.そこで,アマンタジンのインフルエンザウイルス感染予防効果と耐性ウイルスの発生について高齢者を対象に調査を行った.その結果,アマンタジンのA型インフルエンザウイルス感染に対する予防効果は認められるが,既に耐性ウイルスが存在することが示唆された.これはもともとアマンタジンは予防的投与の方が効果的であるのに治療的投与を行っていることに無理があると思われる.今後も耐性ウイルス発生に対する監視が必要であると思われる.
*1 久留米大学, *2 嬉野温泉病院, *3 福岡大学
 
15 Isolation of Amantadine-Resistant Influenza A Viruses (H3N2) from Patients Following Administration of Amantadine in Japan
  Jun Iwahashi*, Katsuro Tsuji*, Tetsuya Ishibashi, Jumboku Kajiwara, Yoshihiro Imamura*, Ryoichi Mori, Koya Hara*, Takahito Kashiwagi*, Yasushi Ohtsu*, Nobuyuki Hamada*, Hisao Maeda*, Michiko Toyoda*, Tetsuya Toyoda*
J. Clin. Microbiol., 39(4), 1652-1653, 2001.
 日本では1998年11月まではインフルエンザA型の治療に対するアマンタジンの使用は認められていなかったが,パーキンソン病の治療薬として広く使用されていた.この間,我々はアマンタジン耐性インフルエンザA型ウイルスの出現を監視し,長期間アマンタジン服用患者より2株の耐性ウイルスを分離した.
* Kurume University
 
16 HIV感染者に対する多剤併用療法による高ガンマグロブリン血症の改善についての検討
  鄭湧*1, 池松秀之*2, 山本政弘*3, 千々和勝己, 有山巌*1, 李文*1, 林純*1, 白井洸*2, 柏木征三郎*3
感染症学雑誌, 75, 535-540, 2001.
 HIV感染者におけるHIVの増殖と高ガンマグロブリン血症との関連について検討するために,未治療群,多剤併用療法後ウイルス消失群,多剤併用療法後ウイルスの残存群について,ガンマグロブリン分画,IgM,IgG,IgA,IgE値を測定した.その結果,カンマグロブリン分画はウイルス消失群において有意に低かった.イソタイプ別にみると,IgG値はウイルス消失群で有意に低かった.また,ガンマグロブリン値が,未治療群では上昇し,ウイルス消失群では改善していることから,HIVの増殖と高ガンマグロブリン血症は,密接に関連すると考えられた.
*1 九州大学, *2 医療法人原土井病院, *3 国立病院九州医療センター
 
17 Surveillance of Poliovirus-Isolates in Japan, 2000
  Tetsuo Yoneyama*1, Kennji Sakae*2, Junniti Baba*3, Takashi Nakayama*4, Katsumi Chijiwa, Kazuhiro Kizoe*5, Hideaki Shimizu*6, Setsuko Iizuka*7, Tohru Ishizaki*8, Reiko Kondo*9, Tatsuo Miyamura*1
Jpn. J. Infect. Dis., 54, 80-82, 2001.
 2000年に,全国9府県で12株のポリオウィルスが分離された.そのうち9株は,一過性の麻痺等の症状を示した患者から分離され,3株は健常者から分離された.これらの株は,国立感染症研究所でRFLP法で検討された結果,すべてワクチン由来株であることが確認された.2000年10月にWHOは西太平洋地区からのポリオウィルスの根絶を宣言したが,世界からポリオウィルスが根絶されるまで,このようなポリオウィルスのサーベイランスを日本国内でも継続しなければならない.
*1 国立感染症研究所, *2 愛知県衛生研究所, *3 福岡市保健環境研究所, *4 富山県衛生研究所, *5 宮崎県衛生環境研究所, *6 川崎市衛生研究所, *7 島根県保健環境科学研究所, *8 京都府保健環境研究所, *9 愛媛県立衛生環境研究所
 
18 Chlorophyll derived from Chlorella inhibits dioxin absorption from the gastrointestinal tract and accelerates dioxin excretion in Rats
  Kunimasa Morita, Masahiro Ogata*, Takashi Hasegawa*
Environmental Health Perspectives, 109, 289-294, 2001.
 クロロフィルをラットに投与し,食品経由のダイオキシン類(17種類)の吸収抑制に及ぼす効果を検討した.0.01〜0.5%のクロロフィル食を投与した結果,毒性が高い2,3,7,8-TCDD及び2,3,4,7,8-PentaCDFの糞中排泄量はコントロール食と比べて,それぞれ1.6〜14.1倍,1.7〜15.6倍増加した.クロロフィル投与量を0.01%から0.5%に増加するに伴って,ダイオキシン類の糞中排泄量は増加した.ダイオキシン類投与5日後のPCDD及びPCDFの体内量はコントロール食と比べて,それぞれ3.5-50.0 %,3.7-41.7 %低下した.クロロフィルは食品経由のダイオキシン類の消化管吸収を抑制し,糞中への排泄を助長し,ダイオキシン類の体内蓄積を防ぐ効果があることを明らかにした.
* Chlorella Industry Company
 
19 茶のダイオキシン排泄促進作用
  森田邦正
茶の機能−生体機能の新たな可能性−, 学会出版センター, 294-298, 2002.
 食品経由のダイオキシンの消化管吸収を抑制し排泄促進させる実験を緑茶を用いて行った.ダイオキシンが混入した油症原因ライスオイル0.5 mlを4gのコントロール食及び10%緑茶食に1回添加し,ラットに投与した.その結果、緑茶食群のラットの飼料摂取量,体重増加量及び肝臓重量はコントロール食群と比べて特に影響はみられなかった.緑茶食群のダイオキシンの糞中排泄量は,コントロール食群と比べて1,2,3,7,8-PentaCDD,1,2,3,4,7,8-HexaCDD,1,2,3,6,7,8-HexaCDD,1,2,3,7,8,9-HexaCDDがそれぞれ4.7,3.7,3.6,3.5倍増加し、2,3,7,8-TCDF,1,2,3,7,8-PentaCDF,2,3,4,7,8-PentaCDF,1,2,3,4,7,8-HexaCDFがそれぞれ9.0,9.1,6.5,4.6倍増加した.ダイオキシン投与5日後のラット肝臓中のダイオキシン分布量は,緑茶食群の1,2,3,7,8-PentaCDDが33%,2,3,4,7,8-PentaCDFが25%コントロール食群と比べて低下した.緑茶はダイオキシンの消化管吸収を抑制し,糞中への排泄を助長し肝臓蓄積を防ぐ効果あることを明らかにした.
 
20 Seaweed accelerates the excretion of dioxin stored in rats
  Kunimasa Morita, Takahisa Nakano*
Journal of Agricultural and Food Chemistry, 50, 910-917, 2002.
 海藻類(わかめ,ひじき,こんぶ)を用いて,ダイオキシン類(17種類)の消化管吸収抑制及び再吸収抑制に及ぼす効果をラットで検討した.ダイオキシン類を海藻食に添加し吸収抑制実験を行った結果,10%わかめ食群のダイオキシン類の糞中排泄量は毒性が高い2,3,7,8-TCDD,1,2,3,7,8-pentaCDD及び2,3,4,7,8-PentaCDFがそれぞれ2.8,4.0,3.7倍,コントロール食と比べて増加した.海藻類は食品経由のダイオキシン類の消化管吸収を抑制し,糞中への排泄を助長し,体内蓄積を防ぐ効果があることを明らかにした.再吸収抑制実験を行った結果,わかめ食群の糞中排泄量はコントロール食と比べて2,3,7,8-TCDD,1,2,3,7,8-pentaCDD及び2,3,4,7,8-PentaCDFがそれぞれ1.7,1.8,2.0倍増加した.海藻類は消化管壁から消化管内に分泌されたダイオキシン類の再吸収を抑制し,糞中に排泄促進する効果があることを明らかにした.
* Riken Vitamin Company
 
21 Effects of cooking on concentrations of Polychlorinated dibenzo-p-dioxins and related compounds in green leafy vegetable "Komatsuna"
  Tsuguhide Hori, Reiko Nakagawa, Kazuhiro Tobiishi, Takao Iida, Tomoaki Tsutsumi*, Kumiko Sasaki* and Masatake Toyoda*
Journal of the Food hygienics Society of Japan, 42, 339-342, 2001.
 小松菜中のダイオキシン類濃度に対する調理の効果を調べた.生産者より直接購入した小松菜を用いて,水洗いと煮沸操作を行い,調理前後のダイオキシン類29異性体の濃度を比較した.小松菜に含まれるダイオキシン類の2,3,7,8-TeCDD毒性当量(TEQ)は,水洗いによって平均0.058pgTEQ/gから平均0.026pgTEQ/gへ,引き続く煮沸操作により平均0.019pgTEQ/gへと減少した.PCDDs及びPCDFs濃度の減少度はコプラナーPCBsのそれと比較して明らかに大きかった.日常の調理操作の過程で緑色野菜に残留するダイオキシン類は減少することが示された.
* National Institute of Health Sciences
 
22 油症患者血中ダイオキシン類レベルの追跡調査(1998年〜1999年)
  竹中重幸, 平川博仙, 中村又善, 中川礼子, 飯田隆雄, 戸高尊*
福岡医学雑誌, 92(5), 139-148, 2001.
 油症患者血中の総PCDFs濃度はPCBパターンがCの患者を除き,依然高いレベルにあることがわかった.特に,2,3,4,7,8-PeCDF,1,2,3,4,7,8-HxCDF,1,2,3,6,7,8-CDFおよび3,3',4,4'-PCBはPCBパターン別にみると,各群間で有意な差(p<0.01)を認めた.PCBパターンがAの典型的な油症患者群では,1998年の平均はPCDDsが21pg-TEQ/g lipid,PCDFsが206pg-TEQ/g lipid,non-ortho PCBsが14pg-TEQ/g lipidであった.1999年の平均はそれぞれ,30,308,14pg-TEQ/g lipidで,PCDFsの毒性寄与率は依然として高く,Cパターンの患者群の平均値は一般人と比べ,有意な差を認めなかった.しかし、中にはAパターンの患者並みのPCDFs毒性寄与率を持つ患者も診られた.
* (社)日本食品衛生協会
 
23 Update of daily Intake of PCDDs, PCDFs, and dioxin-like PCBs from food in Japan
  Tomoaki Tsutsumi*1, Toshihiko Yanagi*2, Munetomo Nakamura*2, Yoichi Kono*2, Hiroyasu Uchibe*2, Takao Iida, Tsuguhide Hori, Reiko Nakagawa, Kazuhiro Tobiishi, Rieko Matauda*1, Kumiko Sasaki*1, Masatake Toyoda*1
Chemosphere, 45, 1129-1137, 2001.
 1999年及び2000年に日本国内16地域で採取,調製したトータルダイエット試料中のダイオキシン類29異性体を分析し,食事経由のダイオキシン類摂取状況を調べた.未検出の異性体濃度をゼロとして計算した場合,平均摂取量は2.25pgTEQ/kg体重/日,未検出の異性体濃度に検出限界の1/2を当てはめた場合は3.22pgTEQ/kg体重/日であった.これらの値はいずれも耐容1日摂取量を下回っている.摂取量全体に対し最も寄与の高いのは魚介類(76.9%)であり,次いで肉・卵類(15.5%)であった.総摂取量に対する同族体別の寄与をみるとダイオキシン様PCBが摂取量全体の約50%を占めていた.
*1 National Institute of Health Sciences, *2 Japan Food Research Laboratories
 
24 アセトニトリル/水抽出−固相抽出管精製による残留農薬の簡易分析法
  中川礼子
福岡県保健環境研究所年報, 28, 83-88, 2001.
 日常的に使用しうる農薬の一斉分析法として,アセトニトリル/水抽出-固相抽出管精製による残留農薬の簡易分析法を検討した.検討した対象農薬は有機リン系19種,有機塩素系13種及び有機窒素系13種の計45種であり,添加回収実験での対象農作物はイチゴ,カボチャ,玄米の3品目で,その平行回数はn=5で実施した.塩素系農薬のTPN,リン系農薬のDDVP,エトリムホス,フェンチオン,窒素系農薬のカルバリル,フェナリモルについては,農作物によって回収率が規定の70-120%をはずれる場合もあったが,その他は概ね良好な結果を得た.本法によって1人1.5日(10-12時間)で8件の前処理,測定及び解析が可能である.
 
25 高活性炭素繊維を用いた沿道排ガス削減技術に関する調査
  下原孝章, 力 寿雄, 中村又善
福岡県保健環境研究所年報, 28, 89-94, 2001.
 ピッチ系の炭素繊維であるOG20Aを不活性ガス中で1100℃で焼成したOG20A-H1100及びPAN系を800℃で焼成したFE300-H800を用いて環境大気浄化への応用を検討した.これら高活性炭素繊維(ACF)の二酸化窒素に対する吸着,除去能は非常に高く,各0.1gのACFで,20ppmの二酸化窒素を16〜18時間,吸着,除去できた.この時,二酸化窒素の吸着に伴い,その半分量の一酸化窒素をACFから排出する不均化反応が観察された.FE300-H800では不均化反応により一酸化窒素が排出される現象が認められない時間(完全脱硝時間)が約1時間観察された.ACFは標準ガス以外に,実際の環境大気中の二酸化窒素,二酸化硫黄に対しても高い吸着活性が認められた.仮に,1kgのOG20A-H1100あるいはFE300-H800のACFを用い,平均50ppbの二酸化窒素を含む環境空気を流速6m/分で採気した場合,このシート1枚で約270〜300日間,二酸化窒素を吸着し続けることが推測された.6m/分の速い採気流速であっても,二酸化窒素,二酸化硫黄以外に,ベンゼン,トルエン,トリクロロエチレン等及び揮発性有機化学物質類を吸着,除去する能力に優れていることが分かった.
 
26 茶抽出液によるアオコ増殖抑制への効果
  笹尾敦子, 松尾 宏, 田中義人*
陸水学雑誌, 62(2), 115-122, 2001.
 茶の抽出液により,アオコ発生の制御の試験を試みた.茶の抽出液(風乾した茶葉1gに100mLの水を加え,120℃,15分間オートクレーブした液.この溶液の濃度は10g/Lで表す)でアオコの原因藻類の1つであるMicrocystis aeruginosa の増殖阻害試験を行った.その結果,5day-EC50が7.7mg/Lで,茶の抽出液がM. aeruginosa の増殖阻害に有効であることが明らかになった.また,同様に緑藻類のSelenastrum capricornutum に対しても3day-EC50は10.8mg/LでM. aeruginosa と近い値を得た.このEC50ではミジンコ及びヌカエビの生育阻害は起こらないので(48hr.-LC50,4day-LC50はいずれも約430mg/L),茶抽出液による藻類増殖阻害は自然界の動物に対する影響は少ないと考えられた.
* 環境部環境政策課
 
27 Determination of ppt levels of atmospheric volatile organic compounds in Yakushima, a remote south-west island of Japan
  Minoru Koga*1, Yoshifumi Hanada*2, Junlin Zhu*1, Osamu Nagafuchi
Microchemical Journal, 68, 257-264, 2001.
 大気中のpptレベルのVOCs濃度を検出するために分析方法を改善した.分析方法はUS-EPAのTO-14を基にした.ターゲットにした化合物はフロン類(4種),ベンゼン及び誘導体(14種),ハロゲン化炭化水素(20種)である.ターゲットにした化合物のこの方法での検出限界は0.016-0.040ppb(0.06-0.23mg/m3)の範囲であった.回収率は77-113%であり,変動係数は3.0-9.0%であった.試料大気は200kPaの窒素ガスで加圧した後,少なくとも14日間は安定であった. 屋久島の大気中VOCsを測定するためにこの方法を応用した.その結果,屋久島の大気中VOCsはローカルな汚染でないことが明らかになった.
*1 Kumamoto pref. University, *2 Kitakyushu Ins. Env.
 
28 水環境の管理と分析上の課題
  永淵修, 沼辺明博*
水環境学会誌, 24, 499-503, 2001.
 水環境の管理と分析上の課題ということで,(1)地方自治体における常時監視と環境調査の変遷,(2)環境分析の現状と課題,(3)新たな環境監視システムの必要性,(4)データ管理とその活用について記述し,今後,規制項目がどのように変遷していくか予想が立たないが,問題となる物質を一つ一つ規制し,監視していく方法は早晩行き詰まるであろうことは予想される.そのためには,バイオアッセイのような総合的水質評価手法の導入が不可欠になるであろう.そして総合指標で影響の可能性が示された試料について,その原因物質を検索し,改善を図るという手法も必要となろう.いずれにしても,環境の測定結果も含め多くの情報が自由に利用・解析できるように公開され,有効に活用されることが望まれる.
* 北海道環境科学研究センター
 
29 除草剤ダイムロンの水田からの流出特性
  永淵修, 海老瀬潜一*1, 浮田正夫*2, 井上隆信*3
水環境学会誌, 24, 325-330, 2001.
 水田散布農薬の環境への流出特性を明らかにするため試験水田において除草剤ダイムロンの田面水,土壌水中濃度の経日変化を調査した.ダイムロンは散布後1日で最大濃度に達し,その後一次反応速度式に近似して濃度減少を示した.また,田面水中ダイムロン濃度は降雨毎に濃度が上昇し,水・土壌間の吸脱着が示唆された.土壌水中濃度は田面水中濃度に比較して濃度ピークに時間差が認められ,散布後10-14日後に最大濃度に到達した.表面流出量は田面水濃度と表面流出水量から,溶脱量は土壌水濃度(70cm)と降下浸透量から推測した.その結果,溶脱量は0.31%,表面流出量は33.0%であり,標記農薬は大部分表面流出で水田から流出することが明らかになった.
*1 摂南大学, *2 山口大学, *3 岐阜大学
 
30 水田における無機態窒素(TIN)の浸透流出モデルに関する研究
  Elshat Rahim*1, 永淵修, 柿本大典*2, 史秀華*3, 浮田正夫*3
水環境学会誌, 24, 619-625, 2001.
 本研究は,試験水田を対象に肥料成分(無機態窒素:TIN)の変化移動機構をモデル化し,調査データを用いて,試験水田における肥料成分の浸透流出特性を再現しようとしたものである.構築したモデルは水田における有機物の分解,土壌の吸脱着,稲の吸収,脱窒およびパラメータにより有機物質の分解,施肥の溶解・拡散などを考慮し,作付け期間中のTIN濃度の浸透流出を推定した.計算結果に関し70cm深の間隙水TIN濃度実測値と比較を行った.その結果はほぼ70cm深の間隙水TIN濃度を再現することができ,構築したモデルは水田肥料成分流出の推定に利用できる.また,モデルによる制定した浸透負荷量は30.6kg/haであり,作付け期間施肥量(103kg/ha)の約30%であった.
*1 西日本技術開発(株), *2 (財)九州環境管理協会, *3 山口大学
 
31 空間ガンマ線量率への黄砂の影響
  楢崎幸範, 加留部善晴*
保健物理, 36, 123-129, 2001.
 黄砂による空間放射線量率への影響を1991年4月〜1999年12月に観測された空間放射線量率をもとに解析した.黄砂の飛来は1〜5月及び11月に認められ,黄砂の出現頻度は1〜11日/年,合計58日であった.黄砂時の空間放射線量率には有意な上昇が認められた.黄砂日後の一雨中における空間放射線量率の平均値は黄砂日前の一雨中の平均空間放射線量率に比べ有意に高く,その減衰時間からラドン娘核種の寄与が窺えた.また,黄砂日後の降水中に検出された全ベータ放射能は黄砂日前に比べ有意に高く,ラドン娘核種のほかにトロン娘核種の増加が示唆された.黄砂日の大気浮遊じんから238U,232Thの壊変核種である214Bi及び212Pb, 208Tlが検出された.これらのガンマ線放出核種の大気中濃度の増加が,黄砂時の空間放射線量率及び黄砂後の降水時における空間放射線量率の上昇に寄与したものと考えられた.
* 福岡大学
 
32 森林内における土壌中137Csの分布と特徴
  楢崎幸範
保健物理, 37, 28-36, 2002.
 福岡県の1969〜1999年における撹乱の少ない裸地表層土壌中137Cs濃度は見かけの半減期7年で指数関数的に減少した.また,表層土壌に対する下層土壌中137Cs濃度の比は約1/5であった.一方,1991〜1998年にかけて採取された森林内及びその周辺の裸地土壌48試料について137Cs,40K及び安定元素のCsを測定した.また,土壌のプロフィルとして強熱減量,pH及び電気伝導率を測定した.森林内土壌中の137Cs濃度は1〜424Bq/kg乾土,平均131Bq/kg乾土であった.137Csは森林周辺の裸地土壌からはほとんど検出されなかった.137Cs濃度には地域的な偏りは認められず,土壌のpH及び電気伝導率に依存した.また,137Cs濃度は常緑樹林内より落葉樹林内土壌で高い傾向を示した.
 
33 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン含浸シリカゲル法によるホルムアルデヒド測定における二酸化窒素の影響
  池浦太莊, 柳川正男, 大野ちづ子*
大気環境学会誌, 36(4), 195-207, 2001.
 環境大気中のホルムアルデヒドを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン含浸シリカゲルで24時間捕集しGC/MSにより分析したところ,2,4-ジニトロアニリン,5-ニトロベンゾフラゾン,m-ジニトロベンゼン,2,4-ジニトロフェノール,1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼン,5-ニトロベンゾフラゾン-3-オキシド,1-ヨード-2,4-ジニトロベンゼン,1,2-ジアミノ-4-ニトロベンゼン,2-クロロ-5-ニトロアニリン,m-ニトロアニリンが検出された.これらの化合物は,2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと二酸化窒素,よう素,塩素などとの反応により生成したと推察された.
 DNPHの分解反応は,大気中の二酸化窒素濃度とDNPH含浸シリカゲル上の水分量に大きく依存するため,試料捕集部の加温,除湿管ないしDMN/Celiteスクラバーの使用が妨害反応の抑制に効果的なことが分かった.
* 徳島県保健環境センター
 
34 食料品製造業排水におけるリンの除去
  志水信弘, 松尾宏, 永淵義孝, 岩本眞二
福岡県保健環境研究所年報, 28, 101-104, 2001.
 有明海の全窒素,全リンに関わる環境基準の水質類型の指定が行われたことから,福岡県流入域から排出される窒素,リンの削減が必要となった.そこでリン除去における生物処理と物理化学処理の併用の有効性と問題点に注目し,排水中のリン濃度の高いあん類製造業の事業所排水を対象として実態調査を行った.活性汚泥法における凝集剤添加のリン除去に関する効果を検討するため,凝集剤(硫酸ばん土)の低(1.7kg/日)または高添加時(7.8kg/日)に調査を行った.その結果,凝集剤の低添加時ではリンを効率的に除けなかったが,リン排出量に見合う量の凝集剤を添加することにより排水中から効率的にリンが除去された.その際に適正な凝集剤の添加がなされていることを確認する指標として,汚泥中に含まれるアルミニウムに対するリンのモル比が常に1より高くすることが望ましいことが明らかになった.また,排水処理コストの33%は,品質改良材の使用に起因しており,使用量の適正化によりリンの排出及び処理コストが削減可能であった.
 
35 竹炭入りコンクリートによる水質浄化
  土田大輔, 中村融子, 徳永隆司*1, 世利桂一*2, 倉富伸一*3
福岡県保健環境研究所年報, 28, 105-109, 2001.
 竹炭を含有させたコンクリートブロックを作製し,その水質浄化能を,溶出する溶解物質と,付着微生物による有機物分解の両面から検討した.浸漬実験の結果,竹炭入りコンクリートからは,カルシウムイオン,硫酸イオンといったセメントに由来するものは少なく,カリウムイオンなどの竹炭由来の無機物質が多く溶出した.また竹炭入りコンクリートは,竹炭の入っていないコンクリートに比べ,六価クロムの溶出量が少なく,吸着実験の結果,竹炭に吸着されていた.試験片を酸化池に3ヵ月間沈めて微生物を付着させた結果,普通コンクリートの3倍近い量が付着しているのが確認された.この微生物量の違いにより,BOD除去速度も大きいことがわかった.
*1 福岡県リサイクル総合研究センター, *2 福岡県商工部 新産業・技術振興課, *3 (株)神垣組
 
36 ジクロベニルによるアサヒナコミズムシの色素異常
  緒方 健
環境毒性学会誌, 4(1), 29-34, 2001.
 1970年代にイギリスでジクロベニルによりミズムシ類に脱皮後の色素形成が阻害される異常が生じることが報告されている.しかし,野外での報告例のみで,色素異常がどの程度の濃度で生じるかは不明なままであった.そこで,日本に生息するアサヒナコミズムシを用いて色素異常が生じる濃度について室内実験で調べた.その結果,50%の個体が完全に白化する濃度は13.4μg/L,50%の個体で正常個体よりも体色が薄くなる濃度は0.75μg/Lであることがわかった.一方,急性毒性試験においては50ng/Lでも死亡は認められず,色素異常が認められる濃度は急性毒性値と比べて極めて低いことがわかった.




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