(2023年3月31日更新)
 福岡県の生物相は、西日本に広くみられる種類で構成されていますが、その一方で大陸との共通種が自然分布していることが特徴的です。これは、過去に何度も大陸と地続きになったことが理由と考えられています。植物ではシチメンソウ、エヒメアヤメ、ダルマギク、チョウジガマズミなど、動物ではムツゴロウ、ヤマノカミ、アリアケヒメシラウオ、ヒメモクズガニ、ヤベガワモチなどが中国大陸や朝鮮半島と共通する生物として知られています。
 
 福岡県と中国大陸・朝鮮半島との共通種
 福岡県と大陸の関係と生物相
 河口域から沿岸部にかけては、塩沼地植物群落を伴う干潟が点在し、これらの環境にはハマサジやシバナ、シチメンソウなどの塩沼地植物、クロツラヘラサギやツクシガモなどの鳥類、トビハゼやシオマネキ、ヘナタリ類、カブトガニ、ヨドシロヘリハンミョウなど、様々な分類群の生物がみられます。また、九州の最北部に位置し、大陸にも近いという地理的条件から、これらの干潟域は渡り鳥の中継地としても重要な役割を果たしています。さらに筑前海沿岸には、砂浜海岸とその後背砂丘が発達し、コウボウムギやカワラハンミョウなど独特の生物相がみられ、コアジサシの繁殖もみられます。
 海域では、3つの海それぞれで特有の生物相を有し、豊前海や有明海では内湾性のシタビラメ類やガザミなど、筑前海では回遊性のトラフグやブリ、アカウミガメなどがみられます。また、筑前海には岩礁地帯もよく発達し、このような場所ではしばしばカジメやワカメなどの海藻の群落もみられます。
 
福岡県の沿岸生態系を代表する景観


 
 福岡県の沿岸生態系に生息・生育する生物
 福岡県の沿岸・海域生態系の特徴
 福岡県の淡水生態系の特徴
 福岡県の陸域生態系の特徴
 福岡県の自然の概況
 県内には、主要なもので55水系、小さいものも含めれば100以上の水系が存在し、九州でも河川の多い地域です。これらの河川には、アリアケギバチやオヤニラミ、カマツカなどの魚類、ムカシトンボやヒメドロムシ類などの昆虫類がみられます。また、河原にはヨシやオギなどの群落が帯状にみられ、カヤネズミやオオヨシキリなどの動物の生息地となっています。また、氾濫原(河川の氾濫で冠水する地形のこと)は、国内の他地域と同様に水田として開拓されています。このような水田や周辺の水路には、トノサマガエルやドジョウ、クロモなどの動植物がみられます。県内ではため池の数が多く、また、筑後流域圏ではクリークが発達しているため、水深のある止水域の面積が大きいのも特徴的です。これらの水域には、オニバスやヒツジグサ、セキショウモなどの水生植物、ニッポンバラタナゴやツチフキなどの魚類、エサキアメンボやコガタノゲンゴロウなど昆虫類がみられます。
 
 福岡県の淡水生態系を代表する景観


 
 福岡県の淡水生態系に生息・生育する生物

 福岡県は、県土面積の約45%が森林となっています。森林のうち植林地(人工林)の占める割合が約65%と高く、次いで二次林が約25%を占め、自然林の占める割合は約1.4%に過ぎません。自然植生は、標高750~800mを境に、おおむね上部ではブナなどの落葉樹を主とする夏緑樹林、下部ではシイやカシ類などの常緑樹を主とする照葉樹林となっています。これらの自然林には、クマタカ、ブッポウソウ、キビタキなどの鳥類、ヨコヤマヒゲナガカミキリやツノコガネ、ニシキキンカメムシなどの昆虫類がみられます。また、平尾台に広がるススキ草原などの半自然植生(二次草原)も貴重なもので、オキナグサやキキョウなどの植物、ホオジロやセッカなどの鳥類、ジャノメチョウやホソハンミョウなどの昆虫類がみられます。
 
 福岡県の陸域生態系を代表する景観


 
 福岡県の陸域生態系に生息する動物

 福岡県の自然の概況
 福岡県の陸域生態系の特徴
 福岡県の淡水生態系の特徴
 福岡県の沿岸・海域生態系の特徴
 福岡県と大陸の関係と生物相
  福岡県保健環境研究所
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〒818-0135 福岡県太宰府市大字向佐野39
 
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 福岡県は、年間を通して比較的温暖な気候で、降水量は沿岸部の一部を除いて1,700mm以上あります。福岡県は豊前海、筑前海、有明海の3つの海に面しており、豊前海は多様な底質の前浜干潟を有すること、有明海は大きな干満差を伴う軟泥の干潟を有すること、筑前海は砂浜、岩礁、干潟など多様な沿岸環境を有することがそれぞれ特徴です。また、陸域は、脊振山地(最高峰:脊振山1,055m)、英彦山地(英彦山1,199m)、釈迦岳山地(釈迦岳1,230m)、古処山地(馬見山:978m)、三郡山地(三郡山:936m)、福智山地(福智山901m)などの山地により4つの流域圏に区分することができます。それぞれの流域圏を代表する河川としては、京築流域圏では今川、祓川、筑豊・北九州流域圏では紫川、遠賀川、福岡流域圏では多々良川、那珂川、室見川、筑後流域圏では筑後川、矢部川が挙げられます。
 福岡県を含む九州北部地域は、約2,000万年前から大きな火山活動もなく安定した地史を持ち、本州と朝鮮半島、中国大陸の中間地点であることから、多種多様な生物がみられる興味深い地域となっています。その一方で、古くから大陸からの玄関口でもあり、稲作等の農業をはじめとした人々の生産活動の盛んな土地であったために、原生的な自然はごくわずかしか残っていません。そのため、県域の大部分が人々の営みの影響下に形作られた自然となっていることも特徴の一つです。

     福岡県の主要な山地・河川・平野・海の地図


生物多様性
福岡県の自然