【参考文献】
[1]福岡県レッドデータブックホームページ
   https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/rdb/
[2]環境省ホームページ「国内希少野生動植物種一覧」
   https://www.env.go.jp/nature/kisho/domestic/list.html
[3]福岡県庁ホームページ「福岡県希少野生動植物種の保護に関する条例(令和3年5月1日施行)」
   https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kisyousyu-jyourei.html
[4]福岡県保健環境研究所ホームページ トピックス「福岡県指定希少野生動植物種保護回復事業について」
   http://www.fihes.pref.fukuoka.jp/~kankyouseibutsu/topics/20220729/

【参考リンク】
・生物多様性総合情報プラットフォーム 福岡生きものステーション
   https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/
 参考文献および参考リンク
(2023年3月31日更新)
 国及び県において、希少種を保護するための法令が定められています。 国では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づき、国内に生息・生育する希少種のうち、人為の影響によって存続に支障をきたしていると判断される種を「国内希少野生動植物種」に指定しており、2023年1月末時点で442種が指定されています[2]。このうち、県内では24種の生息・生育が確認されています(表5)(ただしマルガタゲンゴロウは近年の確認例がありません)。国内希少野生動植物種に指定されると、個体の捕獲や譲渡等が原則禁止となりますが、繁殖力や個体数などの特定の要件を満たす場合には、売買のみが規制される「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定される種もあります。

表5 福岡県内で生息・生育が確認されている国内希少野生動植物種
*:特定第二種国内希少野生動植物種


 福岡県では、希少種の保護により、生物多様性を確保し、人と野生動植物種とが共生する豊かな自然環境を次代に継承することを目的として、「福岡県希少野生動植物種の保護に関する条例」が2020年10月に公布され、同年12月には、希少野生動植物種の保護に関する基本構想、指定希少野生動植物種の選定や保護回復事業に関する基本的事項などを定めた「福岡県希少野生動植物種の保護のための基本方針」が策定されました[1, 3]
 福岡県RDBで絶滅危惧種として選定されている約1,000種のうち、特に保護が必要な20種を、本条例に基づき「指定希少野生動植物」に指定しています(図3)。さらに、キビヒトリシズカ、ムラサキ、コバンムシの3種については、保護回復事業計画を策定し、生息・生育状況のモニタリングや草刈り等の植生管理、防獣柵の設置といった環境改善措置や、生息域外保全などを実施しています[4]

図3 福岡県指定希少野生動植物種
*:国内希少野生動植物種にも指定されている(表5参照)


 希少種の保護施策を的確かつ効果的に実施するためには、生物学的知見を基盤とした科学的判断が重要です。そのためには、希少種の生息・生育状況、分布、生態、保護回復の手法等に関する調査研究が不可欠です。学術研究者等の協力を得つつ、当所が中心となってこのような調査研究を推進していくことが前述の基本方針に記されています。
 当所では、引き続き、保護回復事業計画対象3種の保護回復に取り組むとともに、県民や保全団体、市町村、事業者等が行う希少種の保護活動について、専門的な立場から必要な助言や支援などを行っていきます。

 希少種を保護するための法令等
 RDBに掲載されている植物群落のうち、標高の高い山地森林に成立する群落が全体の29.2%と最も多く、次いで低地森林と海岸が16.9%、湿原・池が14.6%となっています(表3)。一方、希少性の高いカテゴリーT及びUに着目すると、湿原・池、河口・干潟、海岸といった湿性環境に成立する群落が多いことがわかります。
 
RDBに掲載されている動植物については、標高の高い山地森林に生息・生育するものが全体の26.1%と最も多く、次いで湿原・池が13.8%、低地森林が12.5%となっています(表4)。種によって絶滅の危機要因は異なりますが、山地森林では、針葉樹人工林(スギ・ヒノキ植林)の増加や、シカの食害による林床植生の悪化などが、生物に大きな影響を与えていると考えられます。また、湿原・池や低地森林は、農業の近代化や宅地開発などによって生物が減少していると考えられます。さらに近年では、人為的に持ち込まれた外来種による影響も無視できません。
 
今後も、希少種の分布情報や生活史に関する科学的知見を蓄積し、人間活動と希少な動植物が共存するような対策を考えていく必要があります。

表3 福岡県RDB掲載植物群落の立地環境別の群落数
*:福岡県レッドデータブック2011のカテゴリーを示す。

表4 福岡県RDB掲載種の生息・生育環境別の種数
*:維管束植物、その他植物、哺乳類、鳥類については福岡県レッドデータブック2011を、その他の分類群については福岡県レッドデータブック2014のカテゴリーを示す。
 希少種の生息・生育環境
 福岡県の希少種の概要
 福岡県の希少種の概要
 希少種の生息・生育環境
 希少種を保護するための法令等
 参考文献および参考リンク

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 近年、人為的な環境改変の影響などにより、数多くの野生生物がその生息・生育環境を失って今後、希少な野生動植物の絶滅を回避し効果的に保全していくためには、それぞれの種が減少した理由を科学的に明らかにし、現在の生息・生育環境を保全・再生していく必要があります。
 そのために必要な基礎情報となるものがレッドデータブック(RDB)です。福岡県では、2001年に初めて県版のRDBを作成し、希少種の生息状況や減少要因等を整理し公表しました。そして2011年には植物群落、植物、哺乳類、鳥類について、2014年には爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、貝類、甲殻類その他、クモ形類等について、改訂版を公表しました[1](図1)。2025年度中には、前述の全分類群を対象とした改訂版が発行される予定です。これに向けて、現在、福岡県希少野生生物保護検討会議と分科会の委員を中心に現地調査や原稿執筆が進められており、当所職員もこの委員の一員として調査等を実施しています。
 福岡県RDB2011及び2014では、89種類の植物群落が選定されるとともに(表1)、県内では、すでに56種が絶滅または野生絶滅したと考えられています(表2)。そのほか、絶滅危惧種として1,010種、準絶滅危惧種として373種の動植物が選定されており、国内の他
地域と同様に、県内でも数多くの動植物が絶滅の危機に瀕しています。

図1 福岡県RDB2011及び2014(大)と概要版(小)

表1 福岡県RDB掲載植物群落のカテゴリー別の群落数
 
*:福岡県レッドデータブック2011のカテゴリーを示す

表2 福岡県RDB掲載種の分類群別の種数
*1:蘚苔類、藻類、地衣類、菌類を指す
*2:福岡県レッドデータブック2001で約2,300種と記載されているが、ここから外来種を除いた種数を示す
*3:維管束植物、その他植物、哺乳類、鳥類については福岡県レッドデータブック2011を、その他の分類群については福岡県レッドデータブック2014のカテゴリーを示す



 福岡県を中心とした九州北部地域は、全国的にも希少な動植物が多く分布しています。中でも、魚類のセボシタビラやアリアケスジシマドジョウ、エツ、アリアケヒメシラウオ、ムツゴロウ、軟体動物のヤベガワモチ、甲殻類のハラグクレチゴガニ、植物のシチメンソウやウスギワニグチソウなどは、国内では九州北部地域にのみ分布する生物であり、大変貴重なものです(図2)。

図2 国内で九州北部地域にのみ分布する希少種
生物多様性
希少種