生物多様性基本法の制定を受け、福岡県では2013年3月に「福岡県生物多様性戦略」を策定しました*。県内の市町村では、2010年11月に北九州市が「北九州市生物多様性戦略」、2012年5月に福岡市が「生物多様性ふくおか戦略」を策定しています。
 福岡県生物多様性戦略では、2050年の将来像(長期目標)として「生きものを支え、生きものに支えられる幸せを共感できる社会」の構築を掲げています。このような社会を目指し、2022年度までの10年間で達成する以下の4つの行動目標(中期目標)を設定しました。それは次のとおりです。
 1)私たちの暮らしのなかで生物多様性を育みます
 2)生物多様性の保全と再生を図ります
 3)生物多様性の持続可能な利用を図ります
 4)生物多様性を支える基盤とネットワークを構築します
 
 これらの目標に対して、2017年度までの5年間で実施する行動計画と実施体制が記載されています。5年間の行動計画では、13の重点プロジェクトと200の施策が掲げられており、県民、NPO等、企業・事業者、県、市町村など、多様な主体が連携しながら様々な取組が進められています。
 本戦略では、生物多様性に関する国内外の動向や戦略策定の背景、県内の生物多様性の現状と課題について整理し、前半部分に記載しました。これらの内容は、県内の生物多様性をとりまく諸問題を理解するのにわかりやすい資料となっています。
 本戦略において、当所は「本県の生物多様性に関する調査研究、情報収集等の中核としての役割を担う」と位置づけられています。当所では、生物多様性保全の推進に必要不可欠である科学的知見やデータの充実を図るため、戦略行動計画に基づき、県内各地における生物多様性の保全・再生に関する調査研究、生物の分布調査及び分布情報のデータベース構築などを進めています。また、県民参加型生きもの調査、公共工事配慮指針、緑化ガイドラインの策定などの各種施策に対する支援などを行っています。さらに、普及啓発事業への講師派遣や研修の実施などを通して、得られた情報の発信も行っています。

【参考リンク】
 * 福岡県生物多様性戦略
  http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/fukuokaprefefurebiodiversity.html



 
 福岡県生物多様性戦略
 生物多様性条約の第6条には、それぞれの締約国が行動計画を定めることと書かれています。そこで日本では、生物多様性に関する初めての包括的な計画として、1995年に「生物多様性国家戦略(国家戦略)」を策定しました。この国家戦略では、日本や世界の生物多様性の概況が解説されるとともに、生物多様性の意義や、生物多様性保全の目標と具体的な行動計画などが記載されています。その後、およそ5年ごとに見直しが行われ、2002年に新・国家戦略、2007年に第三次国家戦略、2010年に国家戦略2010、2012年に国家戦略2012−2020が策定されています。
 また、2008年には、「生物多様性基本法」が新たに制定されました。この法律では、国家戦略の策定が国の責務として規定されるとともに、地方公共団体にも「生物多様性地域戦略(地域戦略)」を策定する努力義務が課せられました。その結果、2016年3月末時点で地域戦略を策定した地方公共団体は、39都道府県と69市区町村となっています。



 生物多様性をとりまく国内の動向
 生物多様性をとりまく世界の動向
 生物多様性を脅かす危機
 生物多様性とは
 1992年5月に採択された「生物多様性条約」は、同年6月にリオデジャネイロで開催された地球サミットにおいて署名が行われました*。それ以前は、野生動物の国際商取引を規制するワシントン条約や、水鳥の重要な生息地の保全を目的としたラムサール条約などの国際条約がありましたが、生物多様性条約はこれらの条約を補完する形で作られた、生物多様性を包括的に保全するための条約です。2015年5月末時点での締結国は、196の国と地域に及んでいます。
 この条約には、大きな目的が3つあります。1つ目は、文字通り、生物の多様性の保全です。2つ目は、生物多様性の構成要素の持続可能な利用です。私たちが生物多様性から受けている恩恵を、現在だけでなく将来にわたって享受できるよう、生物多様性を守りながら利用していくことが大きな目的の一つとして掲げられています。3つ目は、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で公平な配分です。私たち人間は、生物が持つ成分や体の構造などを参考に、薬や製品などを開発してきました。このような開発を行っているのは主に先進国の企業ですが、生物多様性が豊かで、かつ生態がよく知られていない生物が多いのは開発途上国です。そのため、開発による利益を得る先進国と、生物資源を持ち出されてしまう開発途上国との間で、利益の不平等が生じていたために、3つ目の目的が掲げられました。
 本条約が発効された後、現在では2年に一度、生物多様性条約締約国会議(COP)が開催されています。2010年には名古屋でCOP10が開催され、2011年以降の生物多様性戦略計画である「愛知目標」や、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する「名古屋議定書」が採択され、本条約をさらに推進させる取り決めが行われました。

【参考リンク】
 * みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性
  http://www.biodic.go.jp/biodiversity/index.html
 



 地球では、過去に5回の大量絶滅があったといわれています。一番有名なのは、隕石の衝突によって恐竜が絶滅した第5の大量絶滅時代です。しかしながら、現在は、この第5の大量絶滅時代を大幅に上回るスピードで生物が絶滅しています。なんと、1年間に4万種もの生物が絶滅しているともいわれているのです。
 生物多様性を脅かす危機は大きく4つ挙げられます。まず、人間活動や開発によって、自然の資源が過剰に利用されたり開発されたりすると、生物が生息・生育する場がなくなってしまい、生物多様性が低下したり希少種の絶滅の危険性が上がってしまいます。次に挙げられるのは、自然に対する人間の働きかけが減少することで、二次的自然が荒れてしまうことが挙げられます。近年、日本では、過疎化や高齢化に伴って、林業や山間地での農業、狩猟が衰退している地域が増えてきました。このことにより、棚田に生息していた水生生物の減少や、シカやイノシシなどの有害獣の増加などが生じています。3つ目は、外来生物や化学物質など、本来その地域に存在しないものが持ち込まれることで、生態系がかく乱されてしまうことも大きな問題となっています。4つ目は、地球温暖化など気候変動による影響です。気温の上昇によって生物の分布域が変化したり、海水面の上昇で浅海域が減少することなどが予想されています。



 生物多様性とは
 生物多様性を脅かす危機
 生物多様性をとりまく世界の動向
 生物多様性をとりまく国内の動向
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 生物多様性とは、自然の豊かさを包括的に表す概念で、生物多様性基本法では「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること」と定義されています。この定義の内容について、紹介します。
 まず、生物多様性には「種・遺伝子・生態系」という3つのレベルの多様性があります。1つ目は、種(種間)の多様性で、生物の種類や個体数が豊かなことを指します。地球上には、推定で500万〜3,000万種もの生物がいると考えられており、日本には推定30万種がいるとされています。2つ目は、遺伝子(種内)の多様性です。人間一人ひとりに個性があるように、他の生物も、同じ種内で異なる遺伝子を持つことにより個性が生じます。この個性が進化の原動力となり、環境の変化に適応できる可能性が高まります。3つ目は、生態系の多様性です。生物の中には、森林にすむ生物、草地にすむ生物、海にすむ生物など、それぞれの生態系に特有の生物相が育まれています。生態系の種類が豊富であれば、種の多様性と遺伝子の多様性が豊かになります。また、豊かな生物多様性を保つためには、捕食−被食の関係、共生関係、生態系間の生物の移動といった、生物間のつながりが保たれることも、必要不可欠な要素です。
 では、なぜ生物多様性を守らなければいけないのでしょうか。それは、私たち人間は生物多様性からの恵みによって生活しているからです。例えば、私たちが口にする食べ物や薬の多くは、野生生物が由来となってます。また、新製品や新技術の開発には、生物が持つ成分や体の特徴がヒントになることが非常に多くあります。さらに、生物が作り出す水、土、空気などは、人間のみならず全ての生物の存続基盤として必要不可欠ですし、地域固有の生物多様性が、地域特有の文化を生み出す原動力となっています。このように、生物多様性の恵みがなければ人間の生活は成り立たないのです。


生物多様性
生物多様性の保全