福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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 化学物質対策

1. ダイオキシンとはどんな物質?

1.1 ダイオキシンの化学構造は?

 各数字の位置に塩素がついたものがダイオキシン類です。塩素の数や付く位置によっても性質が異なり、PCDDは75種類、PCDFは135種類、Co-PCBには13種類もの仲間があります。
 これらは毒性の強さがそれぞれ異なっており、PCDDの2と3と7と8の位置に4個塩素がついたもの(2,3,7,8-TCDD)がダイオキシン類の仲間で最も毒性が強いことが知られています。
 ダイオキシン類は種類によって毒性が大きく異なるので、毒性を評価するときには2,3,7,8-TCDDの毒性を1として、他のダイオキシンの毒性の強さを換算して評価します。この場合にはTEQ(毒性当量)という単位が使われます。ダイオキシン類の濃度は全てこのTEQで表現されます。

1.2 ダイオキシンの性質は?

 ダイオキシン類は、無色無臭の個体で、ほとんど水に溶けませんが脂肪などには溶けやすいという性質を持っています。また、ダイオキシン類はほかの化学物質や酸、アルカリは容易に反応しない安定した性質を持っていますが、太陽からの紫外線で徐々に分解されることが分かっています。

1.3 ダイオキシン類を表す重さ、濃度の単位とは?

 ダイオキシン類の重さと濃度を表すの「ピコグラム」という単位が用いられます。1ピコグラムとは1グラムの1兆分の1(1/1,000,000,000,000)の重さです。では、水1リットル(1L)あたり1ピコグラム1(pg)のダイオキシン類とはどのくらいの濃度でしょう?これは、長さ50 km、幅20 km(福岡県の1/5くらいの面積)、深さ1 mのプールの水に、1 gのダイオキシン類を溶かして薄めたものと大体同じです。普段の生活とはかけはなれたとても薄い濃度ですが、ダイオキシン類は、これだけわずかな量で問題にされます。

2. ダイオキシン類の毒性は?

2.1 ダイオキシン類の毒性の強さはどのくらい?

 ダイオキシン類は、「青酸カリよりも毒性が強く、人工物質としては最も強い毒性を持つ物質である」といわれることがありますが、これは、日常の生活の中で摂取する量の数十万倍の量を摂取した場合の急性毒性のことです。  しかしながら、ダイオキシン類は意図的に作られる物質ではなく、実際に環境中や食品中に含まれる量は超微量ですので、私たちが日常の生活の中で摂取する量により急性毒性が生じることはないと考えられます。

2.2 ダイオキシン類はがんを起こすか?

 ダイオキシン類のうち2,3,7,8-TCDDは、人に対して発がん性があるとされていますが、現在の我が国において、通常の環境の汚染レベルでは危険はありません。
 WHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)の報告によると、ダイオキシン類の中でも最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TCDDは、事故などの高濃度ばく露の知見から人に対する発がん性があるとされています。しかし、ダイオキシン類自体の発がん性は比較的弱く、遺伝子に直接作用して発がんを引き起こすのではなく、他の発がん物質による遺伝子への直接作用を受けた細胞のがん化を促進する作用(プロモーション作用)であるとされています。
 しかし、現在の我が国において、通常の環境の汚染レベルではダイオキシン類によって、がんになるリスクはほとんどないと考えられます。

2.3 ダイオキシン類には他にどのような影響があるのか?

 多量のばく露では、発がんを促進する作用、生殖機能、甲状腺機能及び免疫機能への影響があることが動物実験で報告されています。しかし、人に対しても同じような影響があるのかどうかはまだよくわかっていません。

2.4 ダイオキシン類の安全な基準量はどれくらい?

 ダイオキシン類の安全性の評価には耐容一日摂取量(TDI)が指標となります。耐容一日摂取量とは、人が一生涯にわたり連日摂取し続けても健康に対する有害な影響がないと判断される1日あたりの摂取量です。ダイオキシン類のTDIについては4 pg-TEQ/kg/日(体重50kgの人では200 pg-TEQということになります)と設定されています。しかしながら、一時的に多少超過しても長期間での平均摂取量以内であれば健康に影響を与えるものではありません。

3. ダイオキシン類はどこから、どこへ?

3.1 ダイオキシン類は、どこでどのようにしてできるのでしょう?

 物が燃える時にダイオキシン類は自然に発生します。ダイオキシン類は様々なところで発生しますが、主な発生源は、ごみの焼却による焼却工程等の他、金属精錬の燃焼工程や紙などの塩素漂白工程などです。ごみの焼却場からのダイオキシン類が多い理由は、ごみを燃やすときに不完全燃焼したり燃やす温度が低かったりするとダイオキシン類ができやすいからです。

3.2 生成したダイオキシン類は、どのように環境を汚染しているのでしょうか?

 ダイオキシン類は、主としてものを燃やすところから発生し、処理施設で取りきれなかった部分が大気中に出ます。また、かつて使用されていたPCBや一部の農薬に不純物として含まれていたものが底泥などの環境中に蓄積している可能性があるとの研究報告があります。
 環境中に出た後の動きの詳細はよくわかっていませんが、例えば、大気中の粒子などにくっついたダイオキシン類は、地上に落ちてきて土壌や水を汚染し、また、様々な経路から長い年月の間に、底泥など環境中に既に蓄積されているものも含めて、プランクトンや魚介類に食物連鎖を通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられています。また、ダイオキシン類は、自然界でも発生することがあり、例えば、森林火災、火山活動等でも生じるといわれています。

環境省パンフレットより

3.3 私たちは毎日どれくらいダイオキシン類を体内に取り込んでいるのでしょう?

 大気中に排出されたダイオキシン類は、私たちの環境を広く汚染し、きわめて微量ですが、人間はこれを魚や肉、乳製品などの食物を通して体内に摂取していると考えられます。日本人の一般的な生活環境で取り込まれるダイオキシン類の量は、1日に体重1 kg当たり2.3 pg-TEQと推定されています(体重50 kgの人なら115 pgTEQを体内に取り込んでいることになります)。これは、日本が安全基準として定めた耐容一日摂取量(TDI)4 pg-TEQ/kg/日を下回っており、健康に影響を与えるものではありません。

環境省パンフレットより

3.4 ダイオキシン類はどんな食べ物に多く含まれているのでしょう?

 ダイオキシン類は、脂肪に溶けやすいので、脂肪分の多い魚、肉、乳製品、卵などに含まれやすくなっています。野菜については、根から水を吸い上げることによってダイオキシン類を濃縮することはあまり考えられないとされています。また、魚、肉などに比べれば、野菜から取り込まれるダイオキシン類の比率は低いものと考えられます。
 ダイオキシン類がひとたび体に入ると、その大部分は脂肪に蓄積されて体にとどまります。ごくわずかな量が、分解されたり体の外に排出されたりしますが、その速度は非常に遅く、人間の場合は半分の量になるのに7年かかるとされています。

参考リンク
 厚生労働省ホームページ:食品中のダイオキシン対策について
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kagaku/dioxin/index.html

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