Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
福岡県保健環境研究所
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2.1 チョウセンアサガオ
チョウセンアサガオの有毒成分はアルカロイド(アトロピン、スコポラミン)で、嘔吐、腹痛など消化器症状の他に幻覚、錯乱などの神経症状を呈する。また、特徴的な症状として瞳孔散大を呈する。チョウセンアサガオの名称からツル性の植物を連想するが、アサガオ様の花弁を有する木立多年草で園芸店などではダチュラ、ブルグマンシア、エンゼルトランペット等の名前で販売されており有毒種と気付かずに誤食した事例がある。また、家庭菜園の近くに自生したチョウセンアサガオの葉をモロヘイヤ、根はゴボウ、幼花をオクラやシシトウ、種子をゴマと誤って喫食された例も見られる。6月に県下で発生した事例では葉をバジルと誤認して喫食していた。従って、ダチュラ等の名前であっても有毒種であることを認識すること、家庭菜園等での混植を避け食品に混入させないように注意する必要がある。

2.2 クワズイモ
 
観葉植物として栽培されるクワズイモは茎(葉柄)を食用とするミズイモと同じサトイモ科に属し両者はよく似ている。しかし、クワズイモの植物体内にはシュウ酸カルシウムの針状結晶が多数存在し、咀嚼の際に口腔内の粘膜に突き刺さることで、痛みやしびれを主症状とする食中毒を引き起こす。クワズイモは観葉植物として鉢植えで売られていることが多いが、数年栽培する内に植木鉢一杯に成育し家庭菜園の端等に地植えや廃棄する場合がある。こうして地植えになったクワズイモをミズイモと誤認して喫食する例が多く見られる。10月に県下で発生した事例でも庭先の花壇に地植えしたクワズイモの葉柄をミズイモと誤認して喫食したものであった。クワズイモには有毒成分があることを認識することと、家庭菜園等での混植を避け誤食しないように注意する必要がある。


2.3 キノコ
 平成22年に関東以北でニガクリタケを食用キノコと間違え産直市等で販売し、食中毒を引き起こした事件が発生しマスコミ等で大きく報道された。福岡県でも10月に採取したミドリスギタケを食用キノコと間違え喫食する食中毒事件が発生した。日本には肥沃な山林と豊かな降水量といったキノコの生育に適した自然環境に恵まれているため、数千種類のキノコが自生していると推察されている。このうち150種ほどが毒キノコとして知られ、その食中毒も致命的なものがあり注意を要する。キノコの鑑別は「タテに裂けるキノコは食べられる」と言った根拠のない誤った情報に惑わされることなく、正しい知識と専門家による指導を受けることが必要である。
年報
アクセス
別表1 処理等により人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの種類
食品衛生
/ 食中毒
 科名 種類(種名)    部位
筋肉   皮 精巣 
フグ科                クサフグ     −    − 
コモンフグ   ○     −    − 
ヒガンフグ  ○     −    − 
ショウサイフグ   ○     −   ○ 
マフグ  ○     −    ○ 
メフグ  ○     −   ○ 
アカフグ  ○     −    ○  
トラフグ  ○     ○    ○  
カラス  ○     ○    ○  
シマフグ   ○     ○    ○
ゴマフグ   ○     −   ○ 
カナフグ  ○     ○   ○ 
シロサバフグ  ○     ○   ○ 
クロサバフグ  ○    ○    ○ 
ヨリトフグ  ○     ○    ○ 
サンサイフグ   ○     −    −
ハリセンボン科 イシガキフグ  ○     ○    ○
ハリセンボン   ○     ○   ○ 
ヒトヅラハリセンボン  ○     ○    ○ 
ネズミフグ  ○     ○    ○ 
ハコフグ科 ハコフグ  ○     −   ○ 
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(厚生労働省、環乳第59号「フグの衛生確保について」、S58.12.2)
 自然界の動植物には体内に有毒成分(自然毒)を持つものが多数知られており、自然毒を原因とする食中毒事件も毎年発生している。食中毒全体から見れば発生件数や患者数共に僅かではあるが、フグ毒や毒キノコ等致命的なものもあり注意が必要である。平成22年度に県内で発生した自然毒による食中毒事例を中心にその背景や注意点等を解説する。
 食中毒の原因となる動物性自然毒はすべて魚介類由来のもので、フグ毒や貝毒による食中毒が広く知られている。

1.1 フグによる食中毒

 フグ毒テトロドトキシンは神経毒で古くから致命的な食中毒の代表的なものである。例年全国で20件程度発生するが、福岡県下ではほぼ毎年発生している。その多くは釣ったフグを家庭内で調理喫食した事例である。フグの有毒部位は種類や成育する環境により異なることが知られているが、厚生省(現厚労省)は1983年にそれまでの知見をまとめ日本沿岸でみられるフグの組織別毒性を示し、フグの取り扱いにあたっては、通知により採取海域・種類・部位等に関する統一された基準での衛生対策が示されている。フグの鑑別や調理は本通知に従って都道府県等がフグの取り扱いを見とめる者(フグ処理有資格者)に任せるべきで、安易な家庭内での鑑別、調理は危険である。また、最近フグの交雑種なども見られ、これまで食用に供していた部位が有毒化した例も報告されており注意が必要である。
クワズイモのシュウ酸カルシウム結晶の電子顕微鏡写真
 その他、身近にある植物性自然毒を原因として発生する食中毒の例として、ジャガイモの芽や緑色部分に含まれるソラニンと呼ばれる毒素が原因となるものがある。スイセンや彼岸花の葉をニラやネギと誤認して喫食した例や、添え物として皿に敷いてあったアジサイの葉を喫食して食中毒を発生した事例も報告されている。また、関東以北では山菜と誤認し、トリカブトやバイケイソウを喫食し食中毒が発生した例が毎年報告されている。

 これまでに解説したように、自然毒による食中毒は不正確な知識による鑑別や誤認あるいは混入により、有毒成分を含む魚介類や植物を喫食することで発生している。従って、自然毒による食中毒を避けるためには、家庭等での無資格者によるフグの調理、喫食は避けること。野草やキノコの鑑別は確実に行うこと。家庭菜園では野草等は取り除き、作物と様子の異なる植物が生育した場合には食べない等の注意が必要である。特に、フグ毒や毒キノコによる食中毒では致命的な事例があり、慎重に判断することが求められる。
チョウセンアサガオ
クワズイモ
 植物に含まれる有毒成分はアルカロイドサポニン、配糖体等である。新緑の4月から6月の山菜摘みシーズンに有用植物と誤認、あるいは秋のキノコ狩りシーズンに食用キノコと誤認し採取して喫食し、食中毒を起こすことが多い。従って、有毒なものと有用植物との鑑別を確実に行うことと、不正確な知識に基づいて採取・喫食せず、怪しいものは食用を避けることが必要である。また、本県では家庭菜園等に成育した自然毒を有する植物を作物と誤認して喫食する事例が多く見られる。
自然毒による食中毒ついて
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