福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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1.はじめに
 水生生物保全水質環境基準とは、水生生物の保全を目的にした水質環境基準です。
 従来の水質環境基準は、「人の健康の保護」や富栄養化など「生活環境の保全」に支障となるおそれのある物質について設定されています。
 しかし、水生生物や生物多様性の減少が各地で見られるようになるにつれ、「健全な生態系の維持・再生」、「良好な水環境の保全」のためには、水生生物への影響も考慮した基準が必要であると認識されるようになりました。
 欧米では、水生生物保全の観点から水質目標が早くから設定されており、日本でも2003年11月に「水生生物の保全に係る水質環境基準」が告示され、全亜鉛に基準値が設定されました。さらに2012年8月にノニルフェノール(以下NP)にも基準値が設定され、今回、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(以下LAS)が追加されました。

2.直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)について
 LASは、ベンゼン環に直鎖のアルキル基(-CnH2n+1)が結合した直鎖アルキルベンゼンにスルホ基(-SO3H)が結合した化合物です(図1)。
 さらに、アルキル基の炭素鎖数によって同族体が存在し、またスルホフェニル基の結合位置により異性体(スルホフェニル異性体)が存在します。
 またLASは、その構造により水に溶けやすい部分(親水基)と油に溶けやすい部分(疎水基)があり、界面活性剤としての特性を持っています。  
そのため私達の身の回りには、LASが使われた製品がたくさんあります。それは、家庭用の洗濯洗剤や業務用洗剤、繊維工業用染色助剤、農薬乳化剤、羊毛・合繊の洗剤等です。
 このように私たちの生活によく使われているLASですが、水環境中に排出されると微生物による分解を受けます。しかし、魚類や甲殻類(ミジンコ)、藻類を用いた毒性試験において比較的低濃度で急性毒性や繁殖影響さらに遊泳阻害が確認されており、水生生物に対し強い有害性が指摘されています。

3.直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)の水生生物保全環境基準項目への追加
 このように、LASについて水生生物への毒性影響が明らかとなったことから、2012年12月に淡水域(河川・湖沼)の4つの類型で20~50 µg/L以下、海域の2つの類型で6~10 µg/L以下とする水質目標値が中央環境審議会水環境部会で示され、水質環境基準項目への追加が答申されました。その後、2013年3月27日に全亜鉛,NPに続く環境基準項目にLASが追加されました(表1)。


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表1 水生生物保全水質環境基準(LAS)
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図1 代表的なLASの構造図
環境科学部 水質課 技師 古閑豊和
水生生物保全水質環境基準項目へ追加された
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)について
総務課