福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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1.下水道の役割
 下水道は、私たちが安全で衛生的な生活をするうえで、大きな役割を果たしています。下水道は、「家庭や工場から出る汚水を浄化して自然にもどす」役割と、「道路に降った雨水を河川へ排出または貯留することで、都市部での浸水を防ぐ」役割を果たしています。これによって、河川や海域の水質の保全や望ましい水環境の創出を担っています。

2.下水道に期待される新たな役割
 下水道の整備普及により、水環境は改善されてきました。一方で、生物多様性の保全や持続可能な水産活動を育める「豊かな海」にとっては、水生生物の生息・生育に必要な栄養素が不足している可能性が指摘されるようになりました。そこで、下水処理場の新たな役割として、窒素やりんなどの栄養塩類の循環バランスを地域に応じて適切に保つことで、水生生物の生態系や水産資源への配慮等、きれいなだけでなく豊かな水環境の保全へ寄与することが期待されています。

3.下水処理場における季別運転
 水環境中の栄養塩類バランスを適切に保つため、負荷削減の一辺倒ではなく、地域のニーズに応じ季節毎に水質を管理する季別運転が進められています。季別運転とは、放流先の水質保全のために栄養塩類の放流濃度を低い水準に維持する通常運転期間と、「豊かな海」の再生のために栄養塩類の放流濃度を高い水準に維持する栄養塩類増加運転期間に分けて、季別に運転方法を切り替える運転のことです



季別運転管理における栄養塩類の放流濃度の考え方のイメージ図
(出典:国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/001105123.pdf)


 例えば、下水処理水放流先で行われているノリ養殖に配慮し、冬季(11~3月)は栄養塩供給として有機物を除去しながら窒素などを残存させる運転を行います。その際に、水質環境基準の達成に影響を与えないことを確認する必要があります。




流域別下水道整備総合計画(流総計画)における「豊かな海」と季別運転管理の考え方
(出典:国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/001105123.pdf)


 今後も全国的には有機汚濁濃度や栄養塩類の削減に取り組んで行く必要があります。そのため、季別運転を実施する場合においては放流水質の状況(通常時は栄養塩類を可能な限り削減、栄養塩類増加運転時も法令や条例は遵守していること)、放流先の水環境の状況や運転の効果(漁業被害の軽減、漁獲量の安定)等について継続的に観察し、データの蓄積を行い、研究を進める必要があります。

参考資料
[1] 下水放流水に含まれる栄養塩類の能動的管理のための運転方法に係る手順書(案)(国土交通省 ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/001105123.pdf)
[2]  きれいで豊かな海の確保に向けた下水道の取組について(中央環境審議会 水環境部会瀬戸内海環境保全小委員会(第10回)(平成30年3月6日 資料8)(環境省 ホームページ https://www.env.go.jp/press/y0915-10/mat08.pdf)

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環境科学部 水質課 主任技師 柏原学
下水処理場における季別運転の試み