福岡県保健環境研究所
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 初めて海洋プラスチック汚染が確認されたのは、1963年にカナダで海鳥の体内からプラスチック片が発見されたことに遡ります。本格的にプラスチックの製造が始まったのが第二次世界大戦後の1950年ごろなので、プラスチックの大量生産が始まったのとほとんど時を同じくして海洋の汚染も始まったことになります。しかし、海洋プラスチック汚染が問題となったのは21世紀に入ってからです。2016年の世界経済フォーラムで発表された報告書では、毎年約800万トンのプラスチックごみが海洋に流出していると試算されました。また、2050年には海洋プラスチックごみの重量が魚の重量を超えると予測されています。






図1 海岸で回収したプラスチックごみ
 

 

 海洋プラスチックごみには様々な形状・種類のものがありますが(図1)、特に注目されているのが5 mm以下のプラスチックと定義されているマイクロプラスチックです。プラスチック自体に毒性はありませんが、マイクロプラスチックは主に2つの面で生態系への影響が懸念されています。一つは粒子毒性による物理的影響で、生物の体内で物理的異物としてはたらき、炎症を引き起こすなどの障害が生じるといわれています。もう一つはプラスチックにもともと含まれている添加剤や、プラスチックが環境中で吸着した有機汚染物質を生物が摂食することによる化学的影響です。

 マイクロプラスチックの調査研究は海域で多く実施されており、データの蓄積が進んでいます。日本近海(東アジア海域)では世界の海洋の平均値の約27倍のマイクロプラスチックが検出され、マイクロプラスチックのホットスポットといわれています。海域から遅れて陸域の調査研究が始まっており、調査手法が確立されつつあります。当所では、陸域のマイクロプラスチックの発生源の一つと考えられる河川において汚染実態把握の調査研究を実施しています(図2)。

 




図2 河川調査風景(左)と検出されたマイクロプラスチック(右)

 

 調査は、環境省が作成した「河川マイクロプラスチック調査ガイドライン」に準じて実施しています。図3に調査結果の一例を示します。20202月から20222月まで5河川でマイクロプラスチック調査を実施したところ、平均個数密度は6.02 /m3となりました。今後も調査を継続し汚染実態の把握に努めていきたいと思います。

 

3 個数密度の推移 

 マイクロプラスチックの問題は当然のことながら福岡県だけの問題ではありません。そこで、国立環境研究所と複数の地方環境研究所等の研究者が参加している「河川プラスチックごみの排出実態把握と排出抑制の対策に資する研究」と題した共同研究に参画し、各地方環境研究所と協力して研究を実施しています。この共同研究の成果の一つとして、「10分で要点をつかむ!環境省河川マイクロプラスチック調査ガイドライン」という動画を作成し、Youtubeで公開しています。ガイドラインの文章だけでは分かりにくい操作手順やハンドリングを動画にすることによって、分析者間での分析手法の共通化・統一化を目指しています。今後も各地方環境研究所と知見やデータを集積し、全国的なマイクロプラスチック汚染の実態を把握し、排出抑制につなげていく予定です。

参考資料

1. World Economic Forum: The New Plastics Economy – Rethinking the Future Plastics – (2016)

2. 河川マイクロプラスチック調査ガイドライン(令和36月、環境省)

3. 国立環境研究所動画チャンネル 「10分で要点をつかむ!環境省河川マイクロプラスチック調査ガイドライン」 https://www.youtube.com/user/nieschannel

 





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