ACF浄化方式は、自然風を駆動力とした効率的な浄化、電気エネルギー不要、低設備費、コンパクトな設計、メンテナンスフリーが特徴で、福岡県内はもとより、首都圏における広域的な大気浄化技術への利用が期待されています。
現在、当研究所ではACF浄化技術の確立を目指し、表紙写真のように、自動車に小型ACF装置を搭載し、汚染地域に移動、設置することでNOxの浄化効率を検討しています。
また、今後は、ACFを自動車のバンパー内やラジエターファンの後部、エンジンの採気口にコンパクトに装着する自動車搭載方式の移動浄化型システム(図2)や、都市高速の既存の防音壁の一部や、道路沿道の中央分離帯の柵等にACFを代替えする定点浄化型システム(図3)の実現を目指した研究を進めることにしています。
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
福岡県保健環境研究所
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図2 自動車搭載方式による移動型浄化システム構想
高活性炭素繊維(ACF)について
ACFは、化学物質を単に吸着する以外に、吸着した化学物質を酸化、還元する能力を併せ持っています。例えば、パーアクリロニトリルを原料とするACFでは、窒素酸化物が吸着されやすく、その炭素表面で亜硝酸から硝酸へと酸化されることが分かっています。一方、アンモニアガスが存在すれば、窒素酸化物は無害な窒素ガスと水に還元、分解できることも分かってきました。これらの反応は、ACFの化学構造、炭素表面に吸着した成分間の相互反応に強く依存しています。ACFの微細孔に予め、ある種の化学薬品を含ませておくことで、例えば、ホルムアルデヒド類に、選択的に高い吸着活性を示すような技術も開発され始めています。
図3 道路沿道に設置した定点浄化型システム構想
さらに、将来的にはこれらのACFを、部屋の欄間、網戸、壁材として利用することや、ベンゼン類の削減対策として、発生源のひとつであるガソリンスタンドの貯油タンクの蓋として、あるいは、室内のシックハウス対策として、エアコンの電気機器フィルターとして利用するなど、広範囲な活用が期待されています。現在、ACF浄化技術の効果については最終的な確認段階に入っています。当研究所では、この技術の早急な確立を目指し、精力的に研究を進めています。
炭素繊維(CF: Carbon Fiber)は、石炭及び石油系のピッチ、パーアクリロニトリル、セルロース等を加熱して溶かし、ノズルの先端から引っ張り出して固化させた、黒い髪の毛状の繊維です。この直径約10μmの炭素繊維を、窒素やアルゴンガス中で水蒸気や二酸化炭素と共に600〜900℃に加熱し、炭素繊維表面に、細孔径、約5Å、深さ1 μm以下の無数の微細孔を開けることで高活性炭素繊維(ACF: Activated Carbon Fiber)となります。これらACFは、さらに、800〜1200℃の温度範囲で焼成条件をうまく選択すれば、ACFの炭素構造及び細孔が変化し、目的とする化学物質を吸着、分解する性質を最大に引き出すことが可能となります。そのため、現在、各研究所で、その吸着活性に関する基礎研究が盛んに行われています。
一方、ACFは河川等の水系にも利用でき、農薬等の微量有害物質の除去技術等に応用できます。ACF表面は生物活性が高く、藻類等が発生しやすい特性をもっています。そのため、大気浄化に繰り返し利用した後のACF廃材については、溶脱試験による安全性を確認後、河川等で利用し、水質浄化に再利用する道が期待できます。製糸が可能であれば原理的には、廃プラスチック等のいかなる有機物からでもACFを調製でき、リサイクルを目的として、古着等の繊維をACF原料として再利用する技術が期待できます。
近年、建物が密集した交通量の多い交差点付近や高速道路が立体交差した地域など自動車排出ガスが滞留しやすい地域において、自動車排出ガスに含まれる有害物質(窒素酸化物(NOx))が高濃度となりやすいことが社会問題となっています。この問題を解決するため、道路構造対策や交通量対策等の局地汚染対策と併せ、滞留した汚染空気を浄化する技術の早急な確立が求められています。
当研究所でも、この浄化技術の確立を目的に、独立行政法人 環境再生保全機構の委託を受け、高活性炭素繊維(ACF)を用いた大気浄化技術の開発に取り組んでいます。
ACFとは石油系ピッチなどを加熱加工して製造する繊維状の物質で、古着等の繊維やダイオキシン発生が問題となっている廃塩化ビニルプラスチックなどをリサイクルし製造することも可能です。
当研究所では、このACFを利用することで、NOxを硝酸として捕集あるいは無害な水と窒素ガスに分解することが可能なことを実証しました。また、NOx削減以外に、大気中のベンゼン、キシレン類等の揮発性有害化学物質類、二酸化硫黄、悪臭物質等についても同時浄化が可能であることを明らかにしました。(図1)
ACFの特徴を酸化チタン触媒と比較させて表1に示した。酸化チタン触媒は光照射のもと、窒素酸化物を始めとする化学物質を吸着、分解できる夢のような素材として、近年、脚光を浴び、ブロックあるいは塗料として利用されています。これに対して、ACFは、太陽光等の光照射を必要としないため、室内や地下街、地下駐車場、トンネル内等で使用できる利点があり、筒状、フェルト、織物、ペーパー等、ユーザーの要望に合わせた加工が容易です。そのため、酸化チタン触媒との併用により戸外での、窒素酸化物に対する昼夜連続の吸着、分解効果にも期待がもたれています。ACFは窒素酸化物以外に、硫黄酸化物、微量化学物質の吸着、分解についても期待されています。悪臭物質あるいはハロメタン、ダイオキシン、PCB等の塩素化合物は、健康、遺伝子への影響が懸念されていますが、ACFに捕捉後、低温加熱することで塩素が離脱し、それら化学物質を低コストで分解、無害化できる可能性が高くなります。内分泌撹乱物質は、その大部分が極性化合物であるため、ACFに捕捉されやすい物質と考えられています。
表1 高活性炭素繊維及び酸化チタン触媒の特徴比較
| |
高活性炭素繊維(ACF) |
酸化チタン触媒 |
| 太陽光等の光照射 |
不必要 |
必要 |
| 窒素酸化物の吸着,分解能 |
高 い |
非常に高い |
| 能力維持期間 |
表面積依存,限界あり |
半年に1回程度のメンテナンス |
| 価 格 |
比較的安い |
高 い |
| 最適温度 |
室 温 |
室 温 |
| 微量化学物質の除去能 |
可能性が高い |
一部あり |
| 窒素酸化物の吸着分解生成物 |
窒素ガスと水あるいは硝酸 |
硝 酸 |
使用後の廃材利用の可能性
|
高 い |
低い |
河川,排水等への応用
|
高 い |
低い |
| 加工し易さ |
容易 |
難しい |
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