Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
福岡県保健環境研究所
092-921-9941
〒818-0135 福岡県太宰府市向佐野39

 [ フタトゲチマダニ ] 左から幼虫・若虫・成虫

約2.5mm

3 マダニに咬まれないために
copyright©2013 Fukuoka Institute Health and Environmental Sciences all rights reserved.

年報
アクセス

 マダニは動物(主に哺乳類、鳥類、爬虫類)に寄生して吸血します。その際に様々な病原体を媒介することがあるため、衛生害虫として認識されています。2013年1月に国内で初めてダニ媒介性感染症である重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症例が報告されました。以降、西日本を中心に患者が報告されており、致死率が比較的高いことからマダニへの関心が近年高まっています。ここではそのマダニについて紹介します。

 マダニは家の中の布団などに生息しているダニとは異なり比較的大型で、肉眼で見ることが可能です。大きさは成虫では2mmから3mmくらいのものが多いですが、吸血して膨らむことで1cmを超えるものもいます。森林や草むらなど屋外に生息していますが、民家の裏庭や自然公園、河川敷など人の身近な生活圏にも生息しています。マダニは植物の葉の先端や落ち葉の上などで動物を待ち構え、近くを通りかかった動物に乗り移ります。動物の血を吸血して飽血したマダニは地上に落下し、脱皮をすることで、幼虫から若虫、成虫へと成長していきます。マダニは主に春から秋にかけて活発に活動しますが、冬に活動するものもいるため注意が必要です。

4 マダニに咬まれた場合には

 ※参考資料
1) 藤田博己ほか:ダニと新興再興感染症 全国農村教育協会,53-68,2007
2) 石橋哲也ほか:福岡県保健環境研究所年報,36,85-88,2009

 特にイノシシやシカなど野生動物が多く生息している場所ではマダニも多くいる傾向があるので注意が必要です。
 マダニは人の体に付着しても蚊のようにすぐに吸血をするわけではありません。吸血するのに適した場所を探して徘徊し、やがて吸血します。野外での活動を終えて帰宅したら入浴の際にマダニが付着していないかよく確認するようにしましょう。

感染症
マダニについて
吸血して膨らんだフタトゲチマダニの成虫

 森林や草むら、山の中などマダニが生息している可能性のある場所に行くときには腕や足などの肌の露出を少なくするようにしましょう。「長袖、長ズボンを着用する」、「軍手や手袋を着用する」、「長靴を履く」などで対策をするとよいでしょう。長ズボンの裾を長靴に入れたり、袖口を手袋の中に入れることでさらに効果は高まります。また、DEET(ディート)という成分を含む虫よけ剤を使用することでマダニの衣服への付着を減らすことができます。むやみに草むらの上で寝転んだり、藪の中に入ったりしないことも重要です。
                   

 これらの病原体は自然界の動物とダニ類の間で感染環が形成され維持されており、病原体を保有したダニ類に人が咬まれることによって感染します。しかし、全てのダニ類がこうした病原体を保有しているわけではなく、咬まれたことで必ず発症するというものではありません。

トップページ
研究所紹介
研究概要
啓発資材
リンク集
1 マダニの生態

 日本には2科8属47種と未同定の約10種のマダニが生息しているとされています1)過去に行った福岡県の調査では、3属7種のマダニが県内で確認されています2)マダニの写真は以下のリンクを参照してください
                     
                    マダニの写真(ここをクリック)

5 県内で確認されたマダニの写真

 もしマダニに咬まれた場合には無理に引き抜こうとせず、早めに皮膚科などの医療機関を受診するようにしましょう。無理に引き抜くとマダニの口器が皮膚に残って化膿することがあります。また、マダニがつぶれることで病原体が体内に入り込む危険性があります。2週間ほどは体調の変化に十分注意し、もし発熱などの症状が出た場合には早めに医療機関を受診するようにしましょう。

 ウイルス、細菌、寄生虫などの病原体の一部にはダニや蚊などの吸血性の節足動物によって伝搬されるものがあります。こうした感染様式をとる感染症のことを「節足動物媒介性感染症」と呼んでおり、特にマダニやツツガムシなどのダニ類によって媒介されるものを「ダニ媒介性感染症」と呼んでいます。ダニ媒介性感染症の主なものにはツツガムシによって媒介されるツツガムシ病(病原体:Orientia tsutsugamushi)やマダニによって媒介される日本紅斑熱(病原体:Rickettisia japonica)、SFTS(病原体:SFTSウイルス)などがあります。

2 ダニ媒介性感染症