福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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図1 培養された結核菌
図2 VNTR解析の流れ
 当所での結核菌の検査は主にVariable number of tandem repeats (VNTR)解析という遺伝子検査を行います。結核菌の遺伝子には一定のDNAの配列が繰り返し並んでいる領域(これをVNTR領域と呼びます)が数十か所存在するします。VNTR領域は反復配列数を比較することにより、ある人とある人から検出された結核菌が同一の感染源によるものかを調べることができます。さらに、複数のVNTR領域を適宜組み合わせることによって、結核菌の識別を適切に判定していくことができると考えられます。VNTR解析法はデータを数値で表すことができ、結核菌同士の比較やデータの保存が容易であること、解析のデータベースがPCRであり、迅速にすぐれていることから、全国でも急速に普及しつつある手法です。
 当所でのVNTRの解析は@培養した結核菌からDNAを抽出、AVNTR24領域のPCR、Bシークエンサーでの電気泳動、C各領域の繰り返し回数を算定、D患者さん間での結核菌の遺伝子を比較するといった流れで行っており、全行程を行うのにおよそ2日間程度かかります(図2参照)。
 このVNTR解析は、福岡県において検出される結核菌のタイプの特定、集団感染や院内感染の感染源の特定の広がりの探知、また二次感染予防に役立つと考えられ、福岡県の結核対策の一役を当所も担うことになります。
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 結核は主に人の肺に病変を起こす病気です。昭和20年代までは、「国民病」や「亡国病」などと呼ばれ、恐れられていました。しかし、薬の開発や結核予防法の制定により結核は激減しました。ところが、平成9年に新たに結核患者の増加、集団感染事例発生数の増加がみられ、平成11年に政府は「結核緊急事態宣言」を行いました。結核は今でも公衆衛生上、重要な感染症となっています。結核は、感染している人の咳やくしゃみで結核菌が飛び散り、周りの人がそれを吸い込むことで感染が成立します。ただし、感染しても必ず発病するのではなく、免疫力により押さえ込むこともできます。
 福岡県における結核患者数は過去10年間全国平均よりも多く、平成22年の厚生労働省の調査では全国で12番目に多い県となっています。そのため福岡県では、平成24年度より感染源の究明及び予防対策を支援することを目的に「結核病原体サーベイランス事業」を開始しました。新たに、発生した患者さんの結核菌を当所で検査し、解析したデータを行政機関や医療機関に情報提供します。
福岡県における結核菌病原体サーベイランス事業の紹介
保健科学部 病理細菌課 主任技師 大石明
   主任技師 前田詠里子
総務課