福岡県保健環境研究所
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海岸漂着物組成調査を実施しました 環境科学部 廃棄物課 専門研究員 板垣成泰

調査の目的

 福岡県では、海岸漂着物処理推進法[1]第14条第1項の規定に基づき、福岡県海岸漂着物対策地域計画[2]を策定し、本県の海岸の良好な景観、多様な生物の保全、生活環境の確保等総合的な海岸環境の保全のため、海岸漂着物対策に取り組んでいます。
 その一環として、福岡県内の海岸において、海岸漂着物の組成調査を行いました。

調査の様子

 令和2年12月10日に恋の浦海岸と白石浜の中間地点にある福津市の京泊海岸で行いました(図1)。調査地点は、博多湾の北側に位置し、渡半島の西側にある岬と岬にはさまれた砂浜であり、ダイビングの名所として知られています(写真1)。

図1 調査地点の地図
図1 調査地点の地図
 
海岸の利用に伴い発生するごみ
写真1 調査地点の当日の様子(ロープ内が回収範囲)

 回収した海岸漂着物を国のガイドライン[3]に従ってプラスチック、発泡スチロール、ゴム、自然物などの大分類11項目、必要に応じてさらに細かく分類しました(写真2,3)。

写真2 仕分け作業の様子 写真3  仕分けされた漂着ごみの一部
写真2 仕分け作業の様子 写真3  仕分けされた漂着ごみの一部

調査の結果

 福津市の海岸において調査を行った結果、大分類11項目中8項目で回収物がありました。回収総個数は1,766個※1、回収総容積は1,268 L、回収総重量は142 kgでした。
 大分類11項目に分けた各種海岸漂着物の重量をみると、【自然物、プラスチック、発泡スチロール】の3項目が上位を占めました(図2)。また、個数でみると、【プラスチック、木(木材等)、自然物】の3項目が上位を占めました。特に、個数ベースで最も多いプラスチックは、回収総個数の94%(1766個中1668個)を占めました(図3)。また、発泡スチロールの個数は2個と少ないものの、大型のブイ※2(写真3の右上 白い楕円状の物)が漂着していたため重量で大きな値を占めました。

※1 灌木(植物片を含む、径10cm未満,長さ1m未満)及び各種素材の破片は、個数の計測を行っていないため、回収総個数に含まれていません。
※2 水面上に浮かんで位置を標示する浮体

図2 海岸漂着物の組成(重量ベース)
図2 海岸漂着物の組成(重量ベース)
 
図3 海岸漂着物組成(個数ベース)
図3 海岸漂着物の組成(個数ベース)
 

 自然物を除いた人工物の中で割合が高かったプラスチックに着目し、上位3つを調べました(図4)。個数ベースでみると、【ロープ・ひも(漁具)、その他(生活雑貨)、ボトルのキャップ・ふた】の3項目が上位を占めました。
図4 プラスチック漂着ごみの組成(個数ベース)
図4 プラスチックの組成(個数ベース)
 

 プラスチックの中で回収個数が多かったペットボトル及びキャップには外国製のものが含まれていたため(写真4,5)、回収ペットボトル54本の製造国別割合を調べました(図5)。その結果、日本製が 44%と最も多く、次いで中国製17%、韓国製15%でした。なお、製造国は言語表記等から判断し、印字が読み取れないものは“不明”に分類しました。

写真4 外国製のペットボトル 写真5 外国製のペットボトルキャップ
写真4 外国製のペットボトル 写真5 外国製のペットボトルキャップ
図5 ペットボトルの製造国別割合(%)
図5 ペットボトルの製造国別割合(%)

 福津市の京泊海岸において海岸漂着物を調べた結果、多くのプラスチックが見つかりました。内訳としては、ロープ・ひも(漁具)が最も多く、漁具への対策が重要と考えられます。漁具以外ではその他(生活雑貨)及びボトルのキャップ・ふたの身の回りのものが多く見られ、また、ペットボトルは国外製造のものも確認されています。
 今後も本県の海岸の良好な景観、多様な生物の保全、生活環境の確保等総合的な海岸環境の保全のため、海岸漂着物対策に取り組んでいきたいと思います。


参考資料

[1] 美しく豊かな自然を保護するための海岸における 良好な景観及び環境の保全に係る 海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)
[2] 福岡県海岸漂着物対策地域計画について 福岡県海岸漂着物対策地域計画 (平成28年3月改訂)
     https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kaiganchiikikeikaku.html
[3] 地方公共団体向け漂着ごみ組成調査ガイドライン(令和2年6月 第2版)


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