ミドリガメ等のハ虫類を原因とするサルモネラ症発生事例に係る注意喚起について

■ミドリガメ等のハ虫類の取扱いQ&A(PDF版はこちら

この度、ミドリガメを原因とする小児における重症なサルモネラ症事例を踏まえ、ミドリガメをはじめとするハ虫類の衛生的な取扱いなどに関するQ&Aが作成されました。
ミドリガメなどのハ虫類に触れた後は、必ず、十分な手洗いをしましょう。

1.サルモネラ症について

Q1:サルモネラ症とはどのような病気ですか?
(答)サルモネラを原因菌とする感染症で、通常、サルモネラに汚染された食品を食べることにより胃腸炎症状の食中毒を引き起こします。
また、今回の事例のようにハ虫類などの動物との接触を通じて感染し発症する場合があります。

Q2:ハ虫類を原因とするサルモネラ症は、これまでにどのくらい知られていますか?
(答)日本においては、1975年(昭和50年)以降これまでにハ虫類が原因と判明したものとして、ミドリガメ、ゼニガメによる胃腸炎を症状とするサルモネラ症が少なくとも7件あります。いずれも子供又は高齢者が感染しています。
また、海外においては、カメ、イグアナ、ヘビを原因として、多数の感染事例が報告されており、胃腸炎症状に限らず、菌血症、敗血症、髄膜炎、これらに伴う死亡事例があります。


Q3:ミドリガメなどのハ虫類は、どのくらいサルモネラを持っていますか?
(答)国内外の文献によると、カメ等のハ虫類の糞便中のサルモネラを検査したところ、保菌率が50〜90%であったと報告されています。


2.サルモネラのハ虫類からヒトへの感染、症状、治療について

Q4:ヒトへはどのようにして感染しますか?
(答)飼育中のハ虫類に接触又は飼育箱を洗浄した手指などにサルモネラが付着し、これが口に入ることにより感染します。子供は無意識に手を口に持って行くことが多いので注意が必要です。

Q5:どのような症状が出ますか?
(答)サルモネラによる症状は多岐にわたりますが、通常見られるのは急性胃腸炎です。通常は8〜48時間の潜伏期間を経て発症します。また、まれに、小児では意識障害、けいれん及び菌血症、高齢者では急性脱水症状及び菌血症により重症化します。

Q6:治療方法は?
(答)胃腸炎症状の場合、安易に下痢止めなどの市販薬を使用することは避け、医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。また、医師に対して、ハ虫類に接触した又は飼育していることを告げてください。医療機関においては、特に症状が重い場合には抗菌薬(ニューキノロン系あるいは第3世代セファロスポリン系薬)による除菌がなされます。 3.ミドリガメなどのハ虫類の取扱い方法について

Q7:購入する際はどのようなことに注意したらよいですか?
(答)ミドリガメをはじめとするハ虫類は、サルモネラに感染していても症状を示さないために外見上は感染の有無が分かりません。子供やお年寄り、免疫機能が低下した方がいる家庭等では、ハ虫類を飼育するのは控えるべきです。購入する場合は、ハ虫類の多くはサルモネラを保有していることを念頭に、特に感染する危険性の高い方がいる家庭等では、飼育方法を十分検討して下さい。
なお、米国においては、サルモネラによる感染症を防止するため、1975年から4インチ(約10cm)以下のミドリガメを含むカメの販売は禁止されています。

Q8:ミドリガメなどのハ虫類はどのくらい輸入されていますか?
(答)ペットショップ等で販売されているミドリガメ等のハ虫類の多くは、海外から輸入されたものです。統計が取り始められた2002年以降、毎年70万頭以上のハ虫類が輸入されており、輸入されるカメの大部分は米国産となっています。


Q9:飼育時の注意事項は?
(答)カメなどのハ虫類の多くはサルモネラに感染しており、サルモネラを含む糞便を排泄していることから、飼育水などには多量のサルモネラが存在する可能性があります。これらは人のサルモネラ症の感染源となりますので、飼育水を交換する場合は、食品や食器を扱う流し台などを避け、排水により周囲が汚染されないよう注意することが必要です。また、飼育中のハ虫類を飼育槽から出して自由に徘徊させたり、台所等の食品を扱う場所に近づけたりしないように注意することも重要です。

Q10:触った後はどうしたらよいですか?
(答)カメなどのハ虫類をはじめ、動物を触った後には必ず十分に手指を石けんを用いて洗浄してください。

Q11:飼っているミドリガメからサルモネラを除菌することはできないですか?
(答)サルモネラに感染したカメに抗生物質を投与して除菌を試みた実験によると、一時的にサルモネラの排出が停止したかのように見えても完全にはカメの体内から除菌することができなかったと報告されています。カメからサルモネラを除菌することはできないので動物の飼育環境を衛生的に保つことを心がけてください。

Q12:病気が怖いので、飼育しているハ虫類を逃がしたいのですが?
(答)生き物を飼い始めた場合、最後まで飼い続ける責任を持たなければなりません。どうしてもできない場合は、責任を持って、きちんと飼える人へ譲渡して下さい。場合によっては安楽殺処分しなければならないことも考慮すべきです。このような事態に陥らないためにも、動物を飼い始めるときはその動物の寿命、成長した時の大きさ、性格や生態、人に感染する病気の種類とその予防方法などを十分調べた上で判断してください。
なお、ハ虫類の中には外来生物法や動物愛護管理法によって、飼養することや放すことなどに対する規制のある特定外来生物や特定動物に該当するものがあります。これらを飼養する場合は環境省や地方公共団体の許可を受ける必要があります。詳細は環境省のホームページ(http://www.env.go.jp/)をご覧下さい。

【参考資料】
病原微生物検出情報(IASR) 月報 Vol.26 No.12(No.310)
© Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences.