福岡県保健環境研究所
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ダイオキシン類について
 ダイオキシン類は強い毒性と高い残留性を持つことから、人や生態系への影響が懸念されている物質です。環境中に放出されるダイオキシン類は大きく減少しましたが(図1)、過去に放出されたダイオキシン類は土壌や底質中などに残留しています(図2)。土壌および底質中のダイオキシン類の分析法は2008年に公定法[3], [4]が示されていますが、これらの分析法は煩雑な操作を必要とし、長時間を要することや多量の溶媒を使用することなどが課題となっています。





図1 ダイオキシン類の排出量の推移
(ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)[1]より作成)





図2 ダイオキシン類の濃度の推移
(平成27年度ダイオキシン類に係る環境調査結果[2]より作成)



イオン液体について
 イオン液体は陽イオンと陰イオンのみからなる塩でありながら室温付近でも液体として存在する物質です。イオン液体の代表的な陽イオンと陰イオンの例を図3に示します。イオン液体は蒸気圧が極めて低く、難燃性で、熱安定性が高いという特徴をもち、また構成イオンの組み合わせによって溶媒特性を目的に応じて調節可能であることから、近年注目されています。


図3 イオン液体の代表的な陽イオンと陰イオンの例



ダイオキシン類分析へのイオン液体の応用

 本研究所では、土壌および底質試料を対象に、イオン液体を用いてダイオキシン類を抽出し、分析する方法を開発しています(図4)。本分析法は試料にイオン液体を添加し、加熱しながらダイオキシン類を抽出した後、有機溶媒で逆抽出するというシンプルなものです。高分解能ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)による測定を行う前に簡単な精製操作を必要としますが、分析全体で使用する溶媒は少量のイオン液体と有機溶媒のみであり、環境負荷の低減が期待できます。また、公定法に比べ簡易で迅速な分析が可能であることから、効率的な環境監視体制の構築に貢献できるものと考えます。今後はイオン液体の再利用についても検討し、より低コストで環境に優しい分析法の構築を目指します。


図4 分析フロー




参考資料

[1] 環境省「ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)」
  (http://www.env.go.jp/press/files/jp/105350.pdf)
[2] 環境省「平成27年度ダイオキシン類に係る環境調査結果」
  (http://www.env.go.jp/press/files/jp/105365.pdf)
[3] 環境省「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」
  (https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/manual/dojo-manual/main.pdf)
[4] 環境省「ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル」
  (https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/manual/teishitsu-m/main.pdf)

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イオン液体を用いたダイオキシン類簡易分析法の開発
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