福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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    感染症  /  ウイルス感染症

           エボラ出血熱について

1 エボラ出血熱とは
 エボラ出血熱は、エボラウイルスを原因とする感染症です。その症状は重篤で、致死率が最も高い感染症の一つです。1976年にザイール(現在のコンゴ共和国)及びスーダンで初めて数百人規模の集団感染が確認されて以降、中央アフリカ諸国を中心に20回を超える患者発生が繰り返されています。2014年には、初めて西アフリカ諸国で流行が確認されました。8月28日現在、西アフリカ4カ国での感染者数は3,069人、このうち死者は1,552人で、過去最悪の流行となっています。
 日本ではこれまでエボラ出血熱の患者が発生したことはありません。しかし、エボラ出血熱はその病原性の強さから、日本の法律※1のなかで「危険度が極めて高い感染症(1類感染症)」に位置づけられています。

※1 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」

2 エボラウイルスについて
 エボラウイルスは、1976年にザイールでの最初の流行の際に発見され、その名は流行地近くのエボラ川に由来します。このウイルスは、フィロウイルス科エボラウイルス属に分類されるRNAウイルスです。エボラウイルス属は、これまでに5つの種の存在が明らかになっています(表)。このうち、ザイールエボラウイルス、スーダンエボラウイルス及びブンディブギョエボラウイルスは、大規模な流行に関係があると言われています。また、レストンエボラウイルスは東南アジアにも分布していますが、ヒトで発症した例は報告されていません。
 エボラウイルスは、外側にエンベロープという殻を持つウイルスで、アルコールや塩素系消毒剤で不活化されます。
図1 エボラウイルス属の種類
fig1_types_of_ebola_virus

3 感染様式
 エボラ出血熱は、患者の体液等との直接接触、または、患者の体液等に汚染された物質(注射針等)との接触によって人から人へ感染します。患者の体液等とは、血液、吐物、唾液、尿、便などのことを指します。患者の体液等が傷口や粘膜(目など)から体内に入ることで感染します。一般的に、症状のない人からは感染しません。また、空気感染もないと考えられています。今回の西アフリカ諸国での流行では、葬儀の際に亡くなった人の遺体と接触する風習が、感染拡大に繋がったとも言われています。エボラウイルスの自然宿主はオオコウモリであると考えられています。エボラウイルスに感染した野生動物(オオコウモリ、サル、チンパンジー、ヤマアラシ、アンテロープなど)の死体や血液、分泌物、臓器などに直接触れたり、それらの動物の肉を生で食べることでも感染します。

4 症状について
 エボラウイルスに感染した場合の初期症状は様々で、2〜21日後(通常は7〜10日後)に、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛などの症状が現れます。次いで、発熱などの症状が出てから5日後くらいから、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れます。出血は、エボラウイルスの感染の結果、凝血異常が起きるために起こります。しかし、必ずしも出血が起こるわけではありません。重篤な例では多臓器不全とショックにより死亡することがあります。

5 ワクチン及び治療法について
 エボラウイルスに対するワクチンや治療薬等、特別な治療法はありません。そのため、患者の症状に応じて、症状を軽くするための対症療法を行うこととなります。

6 予防について
 エボラウイルスが存在する可能性のある地域では、手洗いなどの基本的な衛生対策を実施すると共に、野生動物との接触や野生動物の生肉は食べないようにしましょう。

7 参考文献


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