平成23年8月から、福岡県において地域がん登録事業が開始され、その実務を担う地域がん登録室が当所に
設置されました。
今回は、地域がん登録について紹介いたします。
1.地域がん登録の目的
地域がん登録は、毎年福岡県でどのくらいの人が新たにがんと診断されているのか(罹患率)、がんと
診断された人が、一定期間にどのくらいの割合で生存しているか(生存率)などの情報を把握するために
実施されるものです。
がん対策の目的は、がんになる人を減らし、がんから治る人を増やし、患者が元気に過ごすことができる
期間を延ばすことであり、このようながん対策を科学的根拠に基づき企画・評価していくために地域がん登録
が必要です。
2.地域がん登録の流れ
福岡県地域がん登録を開始してからこれまでに、がん診療連携拠点病院15か所及び福岡がん患者の診断情報
は医療機関から、死亡情報(人口動態調査死亡票の写し)は保健所から地域がん登録室に提出され、これらの
情報を照合、集計、分析します。
3.個人情報の取扱い
厚生労働省からの通知において、地域がん登録事業における医療機関から県への診療情報の提供は、個人情報
保護法で規定する「利用目的による制限」(第16条)及び「第三者提供への制限」(第23条)の適用が除外される
事例に該当するとされています。また、福岡県個人情報保護審議会からも、地域がん登録事業にかかる個人情報
収集に関する承認を得ております。
当所におきましては、情報保護のため地域がん登録室は独立した部屋とし、入室者を制限する等、安全管理
について十分配慮し作業を行っています。
4.地域がん登録室の業務
同一患者の診断情報は複数の医療機関から提供されることがあることから過剰登録のないよう徹底した個人照合
作業を行いながら入力作業を進めています。また、同一患者について複数のがんの届出があった場合それが同一起源
のがんなのか、多重がんなのかを全国統一のルールに基づいて判断する作業も行っています。
これらの業務を円滑に進めるため、全国の地域がん登録の標準化、効率化を目的として開発されたデータベース
システムを導入しています。このシステムでは、半自動的にこれらの作業を行うことが可能であり、今後、他の地域
との比較も高精度で可能になるものと考えています。
地域がん登録室の様子