福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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福岡県における梅毒の流行状況について 管理部 企画情報管理課(福岡県感染症情報センター)

はじめに

 梅毒は、1948年(昭和23年)から性病予防法に基づき全数報告が開始されました。1999年(平成11年)4月に、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)が施行されたことから、性病予防法は廃止され、性病予防法の内容は感染症法に引き継がれる形となり、現在も全数報告が継続されています。
 2022年(令和4年)は、福岡県のみならず全国において梅毒の報告数が大変多い年でした。福岡県感染症情報センターでは、毎週、その時に流行している疾病について注意喚起のコメントを発信していますが、2022年は、全52回中15回、梅毒に関するコメントを公表しました。本稿では、福岡県における梅毒の流行状況について、昭和・平成時代からのデータをまとめました。

梅毒の主な特徴(症状とその進み方)

  • 症状が出るまでの潜伏期間が長いです(1~10週、平均3週)。
  • 症状が出る時期(第1期:感染後約3週間、第2期:感染後数カ月、晩期:感染後数年)と消える時期(第1期と第2期の間、第2期と晩期の間)があります。
  • 梅毒による腫れやしこりは痛みがありません。
  • 病気が進行すると赤い斑点が出現することがありますが、この際も痛みやかゆみは軽度です。
  • 症状が消える時期があるため、自然に治ったと自己判断してしまいやすいのですが、実際には、体内にいる病原体により症状が進行していきます。
  • 症状がない時期であっても、他の人にうつす可能性(感染性)があります。
  • 妊娠中の女性が感染した場合、おなかの胎児へも感染が起こり、先天性の異常をもって生まれてくることがあります。

 梅毒の症状については、「【注意!】梅毒の感染者が例年に比べてとても増えています(症状に関する写真も掲載しています)」(https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/baidoku2018.html#8)に写真も掲載されていますのでご参照ください。

梅毒感染者数の推移

 図1は、1967年から2022年までの福岡県における感染者数の推移を示しています。1967年は年間900人以上の感染者数が報告されましたが、その後減少しました。1973年頃と1989年頃に流行がありましたが、1992年以降は年間100人未満で推移していました。しかし、2016年に年間100人を超え、以降、増加傾向にあります。2022年の福岡県の梅毒感染者数は561人(2023年1月5現在)で、1969年(昭和44年)頃と同じ水準になっています。


図1 福岡県における梅毒感染者数の年次推移

男女別の感染者数の推移

 図2は、2000年から2022年までの福岡県における男女別の梅毒感染者数の推移を示しています。毎年、男性の感染者数の方が女性の感染者数より多いことが分かります。


図2 福岡県における男女別の梅毒感染者数の年次推移

感染者の男女別の年齢分布

 図3は、2000年から2022年までの福岡県における男女別の年齢分布を示しています。男性は、総数1900人を100%とした場合、20歳代~50歳代が89%を占めました。女性は、総数939人を100%とした場合、10歳代及び20歳代の割合が男性よりも多いことが分かりました。


図3 福岡県における梅毒感染者の男女別の年齢分布

最後に

 梅毒は、主に性交渉によって感染する病気です。図3の年齢分布から、女性は妊娠可能な年齢の感染者が多くいることが分かります。先に述べたとおり、妊娠中の女性が感染すると胎児も感染することがあるため、梅毒は次の世代にも影響がある病気だということを意識することが必要です。

 症状のところでも述べたように、症状が消えている間も人にうつす可能性があるため、無自覚のうちにうつし・うつされるケースがあります。梅毒をはじめとした性感染症から本人またはパートナーを守るためには、不特定多数の相手との性交渉を避け、コンドームを正しく使用することが大切です。
 また、自分が梅毒に感染した場合は、パートナーにも受診を呼びかけ、検査と治療を受けることも大切です。


参考資料

1.梅毒とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/465-syphilis-info-141107.html(2023.1.5アクセス)
2.伝染病及び食中毒統計 年報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9524-densen.html(2022.12.14アクセス)
3.感染症発生動向調査事業年報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2270-idwr/nenpou/10904-idwr-nenpo2020.html(2022.12.15アクセス)
4.戸田新細菌学改訂34版 p447-452



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