福岡県保健環境研究所
Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences
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新型コロナウイルスのゲノム解析について 保健科学部 ウイルス課 濱崎光宏

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国で発生し、その後、世界中で流行しています。世界保健機関(WHO)によると2023年1月6日の時点で全世界の累計感染者数は663,134,310人、累計死亡者数は6,702,966人1)になっています。2022年12月31日の時点で日本国内での累計感染者数は29,215,535人、累計死亡者数は57,272人、福岡県の累計感染者数は1,375,079人、累計死亡者数は2,320人です。その原因ウイルスである新型コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群の原因ウイルスであるSARSコロナウイルスと似ていることからSARS-CoV-2と命名されました。SARS-CoV-2に感染し発症するまでの潜伏期間は約5日間、最長14日と言われていますが、2022年12月現在流行しているオミクロン株は、3日程度と潜伏期間が短くなっています。主な症状は発熱、呼吸器症状、倦怠感や頭痛で味覚異常や臭覚異常が稀に見られます。主な感染経路は、感染者(無症状病原体保有者を含む)から咳、くしゃみ、会話等の際に排出されたウイルス粒子を含む飛沫を吸入することによる飛沫感染と考えられています。


 SARS-CoV-2(図1)は、エンベロープという脂質二重膜を持っており、その表面にスパイクタンパク質、Eタンパク質、Mタンパク質が存在しています。中でもスパイクタンパク質に変異が入り構造が変化するとウイルスの感染性などの性質が変わることがあります(図2)。SARS-CoV-2は、遺伝子として約30,000塩基の1本鎖のRNAを持っており、増殖や感染を繰り返す中、約2週間で1箇所程度の速度で変異していると考えられています。この特性を利用し当所では次世代シーケンサーを用いた新型コロナウイルスのゲノム解析を2020年10月から実施しています。SARS-CoV-2のゲノム解析は、ウイルスゲノムの変異状況と疫学情報を合わせて解析することにより、感染源の特定や感染経路の推定等に活用すること並びに、新たな変異株の出現を監視することを目的に実施しています。

 当所での新型コロナウイルスのゲノム解析は、①ウイルスRNAを抽出、②DNAに変換(逆転写)、③そのDNAを鋳型にして、PCRでウイルスゲノム全体を網羅する短いDNA断片を増幅、④この短いDNA断片を次世代シーケンサーで解読、⑤コンピューターでウイルスゲノムを再構築するといった流れ(図3)になっており、全工程を行うのにおおよそ10日程度要します。

 病原体の検査は日々進化しているため、当所では今後も新しい検査法の導入を継続し、感染症の拡大防止に努めてまいります。

 


参考

1)WHO Coronavirus (COVID-19) Dashboard (https://covid19.who.int/
2)東京都健康安全研究センターホームページ(https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/lb_virus/kansenshou/virus_gazou/sars-cov-2/


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