1.飼い主のみなさんに気をつけてほしい感染症があります

わたしたちの心を癒やしてくれるかわいいペット。昨今のペットブームが定着化したこともあり、日常生活におけるわたしたち人と動物の距離は一層縮まりました。ことさらイヌやネコなどに代表される愛玩動物(以下、ペット)は、とても身近な存在となりました。これらペットの飼育では、室内飼育の増加といった飼育スタイルの変化から、私たち人間と同じ生活範囲で暮らし、その生活リズムまでもが重なっている場合も少なくありません。
加えて、家族同様の存在となったペットに対しては、人へ行うのと同じような濃厚接触(キス、口移しでの給餌、食器の共用)を行うことが増えてきています。
しかしながら、わたしたち人とペットとが共生していく上で、気をつけていただきたい病気「人と動物の共通感染症(以下、人獣共通感染症)」があります。この共通感染症から人と動物の健康を守り、それぞれが安心して暮らすためには、病気を正しく理解し、予防する知識を持つことが大切です。

2.共通感染症(Zoonosis:ズーノーシス)とは?

世界保健機関(WHO)では、「ズーノーシス」を「脊椎動物と人の間で自然に移行するすべての病気または感染(動物等では病気にならない場合もある)」と定義しました。日本では、「人獣共通感染症」、「人畜共通感染症」などと呼ばれています。厚生労働省では、人の健康問題という視点から「動物由来感染症」とし、動物から人に感染する病気の総称であるとしています。なお、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)では、動物から人への感染と同様、人から動物へ感染する疾病にも注意を払い、動物の健康と安全を確保すべきとの観点から、「人と動物の共通感染症」と表記することとしています。

3.なぜ問題なの?

人獣共通感染症が問題となった背景には、著しい環境の変化や人間社会の変化と行動の多様化が、昨今、世界規模で発生する重大な感染症の発生と関連があるのではと問題提起されたことにあります。具体的な環境の変化等とは、交通手段の発達による人と動物の大量輸送と広域化、土地開発等による自然環境の変化、抵抗力の弱い高齢者の増加、野生動物のペット化などのことです。そうした中、今まで未知であった感染症が見つかったり(新興感染症 注1)、忘れられていた感染症が再び勢いを取り戻したり(再興感染症 注2)するなど、人の健康へ重大な影響を及ぼす感染症の発生においても、その多くが動物に由来すると考えられていることから人獣共通感染症へフォーカスが向けられたものと考えられます。そのため、わたしたちは多くの動物と共存していることを忘れずに、幅広い視野に立った感染症対策を行っていくことが求められています。
注1) 新興感染症の例としては、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱、後天性免疫不全症候群(HIV)、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などがあげられます。
注2) 再興感染症の例としては、結核、マラリアなどがあげられます。

4.どんな病気があるの?

人獣共通感染症は、現在、世界保健機関(WHO)が確認しているだけでも150種類以上あります。代表的なものを以下にお示しします。

表 人獣共通感染症

病原体

病名

関係する主な動物

動物の
主な症状

主な感染経路

人の主な症状

ウイルス

狂犬病

犬・猫・アライグマ・
キツネ・スカンク・
コウモリ

狂躁又は麻痺、昏睡して死亡

感染した動物に
咬まれる

神経症状、発症した
場合、昏睡死亡

リケッチア

Q熱

猫・野生動物・家畜・犬

多くは無症状

ふん・尿・獣皮
などから
経気道感染

インフルエンザ様症状など

クラミジア

オウム病

鳥類

下痢、元気消失

ふん中の病原体
の吸入

風邪に似た症状

細菌

レプトスピラ症

犬・牛・げっ歯類・
野生動物

腎炎

感染動物の尿に接触

発熱、肝臓や腎臓の
障害

細菌

パスツレラ症

犬・猫

多くは無症状

かみ傷、引っかき傷による

傷口が腫れて痛む

細菌

猫ひっかき病

猫(特に子猫)

多くは無症状

かみ傷、引っかき傷による

リンパ節が腫れる

細菌

サルモネラ症

犬・猫・サル・ウサギ・げっ歯類・鳥類・爬虫類

多くは無症状

かみ傷、引っかき傷による

胃腸炎、敗血症

細菌

イヌブルセラ症

犬

多くは
無症状、流死産

流産時の汚物など
からの接触感染

多くは無症状、風邪に似た症状

細菌

仮性結核

豚・犬・猫・サル・
タヌキ・げっ歯類・
鳥類

多くは無症状

かみ傷、引っかき傷による

胃腸炎、虫垂炎

細菌

細菌性赤痢

サル(特に輸入されたもの)

発熱、下痢、
急性大腸炎

ふん中の菌が口の
中へ入る

発熱、下痢、
急性大腸炎

真菌

皮膚糸状菌症

犬・猫・牛・ウサギ・げっ歯類

脱毛、フケ

感染した動物との濃厚な接触

脱毛等の皮膚障害、
かゆみを伴う

寄生虫

トキソプラズマ症

ネコ科動物(犬や他の動物にも感染するが、人の感染源として重要なものは猫)

猫で肺炎・脳炎、
犬で下痢

ふん中の病原体が
口の中へ入る

流産、胎児に先天性
障害

寄生虫

回虫幼虫移行症

犬・猫

食欲不振、下痢、
嘔吐

ふん中の病原体が口の中へ入る

幼児で肝臓、脳、目等に障害

寄生虫

エキノコックス症

キツネ・犬・げっ歯類

多くは無症状

ふん中の病原体が
口の中へ入る

肝機能障害

寄生虫

疥癬

犬・猫

皮膚の強いかゆみ、脱毛

感染した動物との
濃厚な接触

皮膚の強いかゆみ、脱毛

出典:名古屋市ホームページ 人獣共通感染症について
(http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000006196.html)

5.共感染症を予防するには

  • 過剰なふれあいは控えましょう

鶏肉、牛肉など生のお肉にはサルモネラ、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌など人に下痢等を起こす細菌が付着していることがわかっています。そのため、ペットに生のお肉を与えると、飼っているペットの糞便等に下痢等を起こす病原性細菌が排出されることがあります。排出された病原性細菌によって、室内環境が汚染されたり、食器、飲食物、飼い主の手指等を介して、感染することがありますのでペットの食事にも気をつけましょう。

  • ペットに生のお肉を与えないようにしましょう

予防接種や予防薬の投与を行う医療的処置や、爪切りやブラッシングにより体を清潔に保つことが、ペット自体の感染を防いだり、飼い主への感染を防ぐのに重要です。

  • ペットが感染しないためのケアを行いましょう

動物には病気を起こさなくても、人には病気を起こす病原体がいることがあります。また、知らないうちに唾液や粘液に触れたり、傷口をさわってしまうこともありますので、必ず手を洗いましょう!

  • 動物にさわったら、必ず手を洗いましょう

口移しでご飯をあげたり、同じ食器を使ったりしないようにしましょう。また、一緒に寝ることなどは避けましょう。