2026年6月4日
環境基準項目「大腸菌群数」の「大腸菌数」への見直し
環境科学部 水質課
はじめに
環境基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準において、生活環境の保全に関する環境基準に定められている13項目のうち、「大腸菌群数」については、簡便な大腸菌の培養技術が確立されたことを背景として、より的確にふん便汚染を捉えることができる指標である「大腸菌数」へ令和4年4月に見直されました(表1)1)。また、これを踏まえ、水質汚濁防止法に基づく事業場からの排出水における排水基準についても令和7年4月に見直され2)、排水基準に係る検定方法を定める告示の改正が行われました3)。一方で水浴場の水質判定では「ふん便性大腸菌群数」が用いられているなど、ふん便由来汚染の水質評価においては複数の指標が運用されています4)。
ここでは「大腸菌数」について、「1 調査目的 」、「2 見直しの経緯」、「3 測定法」に加えて、基準見直しのあった令和4年度分から最新公表データである令和6年度分までの「4 環境基準達成状況 」についてご説明します。
1 調査目的
水環境では、人や動物の排泄物が混入すると、病原性を持つ菌が存在する可能性があり、公衆衛生上の問題となることから、これまで「大腸菌群数」という指標で、ふん便由来の汚染を評価してきました。
2 見直しの経緯2)
大腸菌(Escherichia coli)は、人や動物などの温血動物の腸管内に常在する代表的な細菌であり、ふん便汚染の指標となります。大腸菌群は、大腸菌を含む5属ほどから構成され、土壌や水中にも存在する種があり、大腸菌群はふん便以外からも検出されます。このため、水環境中において大腸菌群が多く検出されていても、大腸菌が検出されない場合がありました。「大腸菌群数」が基準設定された当時は大腸菌のみを簡便に検査する技術がなかったため比較的簡易に測定できる「大腸菌群数」が採用されてきましたが、近年では簡便な大腸菌の培養技術が確立されたことから、より的確にふん便汚染を捉えることができる指標として「大腸菌数」へ基準項目が見直されました。
3 測定法
「大腸菌数」の測定方法は「水質汚濁に係る水質環境基準の見直しについて(概要)」という環境省の資料に示されています1)。測定方法の概要は図2のようになっています。滅菌した容器に採水した試料をメンブランフィルターでろ過します。次に大腸菌のコロニー(目に見えるサイズの細菌の塊)のみを識別可能な形で発色させる特定酵素基質培地上でこのメンブランフィルターを培養します。図2では大腸菌のコロニーは青色に発色して識別することができます。この青色コロニーを数えることで試料中の「大腸菌数」を算出します。当所でも福岡県内の公共用水域(海域・湖沼・河川)の一部について、「大腸菌数」を測定しています。
4 環境基準達成状況
環境省が公表している最新の公共用水域水質測定結果(令和6年度)によると、全国の類型指定水域の環境基準点における「大腸菌数」の環境基準達成率は、海域で87.5%、湖沼で97.4%、河川で60.0%となっており、令和4年度以降ほぼ横ばいとなっています5)。また、令和6年度の福岡県内の環境基準達成状況も全国の達成状況と同程度の水準にあります6)。ただし、令和4年度以降の「大腸菌数」のデータと令和3年度以前の「大腸菌群数」のデータは、評価指標が異なるため、単純に数値を比較できません。このため、今後も本項目の監視を継続することで、データを蓄積していく必要があります。