急性呼吸器感染症(以下「ARI」という。)は、2025年4月7日より感染症発生動向調査事業における5類定点把握疾患に追加され、全国的なサーベイランスが開始されました。
過去の流行事例が示すとおり、令和2年以降に世界的大流行をもたらした新型コロナウイルス感染症をはじめ、感染症危機の原因としてARIが占める割合は極めて高く、その動向を継続的に把握することは公衆衛生上の重要な課題となっています。
ARIサーベイランスは、症例定義
[1]に合致する症例数の集計および収集検体・病原体の分析を通じて、国内における各呼吸器感染症の患者数・病原体の発生状況を定量的に把握し、流行の傾向と水準に基づいた適時・的確な感染症対策の立案に資することを目的としています。
ARIサーベイランスにより得られる成果は以下の3つが考えられます。
- 流行状況の早期探知: インフルエンザウイルス、RSウイルス、新型コロナウイルス(以下「SARS-CoV-2」という。) などの感染拡大をいち早く察知し、警戒レベルを判断することができる。
- 重症化リスクの把握:入院患者数や重症例の増加を監視し、医療提供体制の逼迫を予測することができる。
- 病原体の変化の監視:ウイルスの型、変異株、薬剤耐性などを把握し、治療やワクチン政策に役立てることができる。
本県では11医療機関をARI病原体定点として指定しており、このうち5医療機関で採取された検体が当所に搬入されています。当所ウイルス課においては、2025年4月14日より、同年3月に国立感染症研究所が示した検査方法に準拠した病原体の検査を実施しています。検査対象の病原体は、インフルエンザウイルスA型・B型、SARS-CoV-2、RSウイルスA型・B型、ヒトパラインフルエンザウイルス(1〜4型)、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトエンテロウイルス/ライノウイルスの計12種類です。2025年12月31日までに444検体の検査を実施したところ、309検体からいずれかの病原体が検出されました(
表1、
図1)。病原体別の検出状況をみると、SARS-CoV-2はほぼ年間を通じて検出され、特に第27週(7月上旬)から第42週(10月中旬)にかけて検出数が増加しました。また、ヒトメタニューモウイルスは第15週(4月上旬)から第18週(5月上旬)にかけて、ヒトパラインフルエンザウイルス3型は第16週(4月中旬)から第27週にかけて多く検出されました。ARIサーベイランスの実施により、流行している病原体の経時的な推移を継続的に把握することが可能となっています。これらの検査結果は毎週取りまとめ、当所ホームページにて公開しています
[2]。流行する病原体は日々変化しています。当所では、その動向をいち早く把握・発信することで、地域の皆様の感染症予防に貢献してまいります。